「森の癒し」とは〜森は心の癒しの扉を開ける

私は、「森林療法」という響きに誘われて、ふら~っと、この世界に足を踏み入れました。

森林療法へのいざない

しかし、そこで出会ったものは、ガチで心を揺さぶられる数々の体験であり、以来『森の癒しってなんだろう?』というギモンに全力で取っ組み合いをしてきました。

 

「森林浴」という言葉は、1982年に当時の林野庁長官が「自然休養林などの国有林を積極的に活用し、森林レクリエーションを楽しみながら健康な体作りをしましょう」と呼びかけた森林浴構想がきっかけと言われています。

森林に浸って気持ち良いと感じる森林浴に対して、森林療法は健康目的の意味合いが強くなります。

NPO法人日本森林療法協会では、森林療法を「健康のために森林を活用すること」と定義しています。

 

2007年~2016年までNPO法人日本森林療法協会の理事をしていた私は、「森の癒し」にさまよい、「心の癒し」「魂の癒し」へと導かれていきました。

 

森に癒しの力があるのは、なぜだろう。

ただ自然の中で過ごすだけで自分を取り戻した経験を持っている人は少なくないでしょう。

自然界は、私たちをありのままに受け入れます。批判も否定もアドバイスもありません。

 

それなのに、なぜ私たちは森で癒されるのでしょう??

 

森での時間は、季節と共に移ろいゆく生命の営みの中に自分自身も存在することを思い出させてくれます。

このとき、私たちは『自分』を超えた『大いなるもの』とつながる感覚があるのではないでしょうか。

それは、ビッグバンを起こして宇宙を作り出し、地球上に生命を作り出し、今、ワタシを動かしている、創造主のような存在とつながる感覚。

 

人類は、500万年にわたる歴史の中で99.99%以上を自然環境の中で生きてきました。遺伝子に刻まれた大自然への信頼の記憶が、『大いなるもの』とつながる安心感によって癒されるのでしょう。

 

森で安心感に包まれたら、「心の癒し」の扉は自然と開かれていきます。

 

あとは、勇気をもってその扉の先へ踏み出していきましょう。

そこには宇宙の進化である、「魂の癒し」が待っています。

 

森林療法の様子の動画↓

Cosmic Academy Japan 飯田みゆきの動画

 

 

①「癒し」とは魂の願いにつながること。

森林療法を始めた当初、自分の中に「癒し」の定義がなく、さまよいつづけていました。

私がさまよっているのですから、参加者もさまよいます。

 

「せっかくの森の中で、あなたの声がうるさくて癒されませんでした。」

 

とアンケートに書かれ、帰りの電車を何度も乗り間違えて家に帰れなくなるほど凹みました。

では、「癒し」とは一体なんなのでしょうか。

 

広辞苑では「癒す」という動詞で掲載されています。

『病気や傷を治す。飢えや心の悩みなどを解消する。』(広辞苑「癒す」より)

 

仏教では、以下を意味して「癒す」という言葉が使われていました。

『精神的・肉体的な病苦からの解放、魂や心の救済』⇒癒すを定義する

 

紆余曲折を経て今、私は、「癒し」とは魂の願いにつながることだと思っています。

 

それは「自分とのつながり」であり、自分自身が持っている「幸せになる力」「世界を幸せにする力」に気づくことだと思うのです。

 

人間は、個人を超えた「私たち」の幸せを願う生き物です。それは、マズローの「自己超越の欲求」であり、トランスパーソナル心理学での「個が生きるつながり」の志向です。

 

 

 

②癒しの3ステップ

私たちの魂は、「幸せになる力」に気づき、「世界を幸せにする力」を発揮するために、肉体と心を持つ存在としてこの地球に生まれてきました。

私たちの目的は地球上で愛と光を表現すること

 

森で癒されると感じるのは、魂の願いに存在する「世界を幸せにする力」が揺さぶられるからではないでしょうか。

 

なんだか、話が壮大になってきました。

「「癒し」とは、ホッと安らぐことじゃないの?」と、思った方、いらっしゃいますよね。

まずは、今いる場所に安心・安全を感じることが一番大切。

 

それから「幸せになる力」に気づき、「世界を幸せにする力」も受け入れていくことが、魂の願いです。

このステップを人間の基本的欲求としてマズローは6段階に、ケン・ウィルバーは3段階にまとめています。

私はこれを「癒しの3ステップ」と呼んでいます。


・・

それでは、それぞれのステップに森がどのように関わってくるかを見ていきましょう。

③森の癒し、ステップ1 ホッとする、安らぐ。

③-1 ボディからホッと安らぐ

森の中では嫌でも体を動かすことになるので、心肺機能や筋力が鍛えられ、神経系も整います。

足元の悪い道を歩くとバランス感覚も養われますね。実際に自律神経の調整、血圧低下、ストレスホルモンの低下などの健康効果も研究されています。

森林療法のエビデンス

 

また、森の中は目に触れる緑、風が通り抜ける音、土の香り、ほほをなでる風、おいしい空気など五感への刺激に溢れています。五感はボディの知覚神経を通して感じられます。

ひとつひとつ、感覚を大切に味わうことは、日常の思考を鎮めてホッと安らぐ時間を与えてくれます。

 

 

③-2 マインドからホッと安らぐ

ここでは、マインド≒「思考」として考えていきます。

自然に触れ合うようになると、もっと自然界について知りたくなります。知れば知るほど、バランスを保った森林生態系に私は魅せられていきました。

「思考」を使って自然界の法則を学ぶことは、地球の法則を学ぶこと、そして自分も自然界の一部であることを改めて感じることです。

しかも、ひとつひとつの生命はシンプルに自分のことだけを考えて生きているのに、自然界はバランスのとれた世界です。

私は長い間、他人に気を使って、他人が望むことを考えて、他人に合わせて生きてきました。そんな私にとって、自分を一番大切にして命を輝かせる自然界は、価値観の転換を迫られる圧倒的な世界でした。

私たちも一人一人が本気で自分自身のために生きても良いのかもしれないと感じたとき、私はなんだかホッとして安らいだのです。

 

③-3 スピリットからホッと安らぐ

スピリットとは、魂とも呼ばれる精妙で神聖で高次な超自然的領域です。

 

人類は500万年にわたる歴史の中で99.99%以上を自然環境の中で生きてきました。大自然の中で過ごした記憶は今も私たちの遺伝子に刻まれています。

現在、人工化された環境の中で私たちは無意識に緊張して暮らしています。森は太古の記憶を呼び覚まし、ホッとする安らぎを感じさせてくれるのだと思います。

 

自然界は優しいだけではありません。時には台風や豪雨により命の安全が脅かされることもあります。それでも次の年にはまた同じように季節がめぐり、生命の営みは続いていきます。

森での時間は、生命の営みの中に自分自身も存在し、人間も自然の中のひとつの存在であることを思い出させてくれます。それは自然との一体感であり、自分を超えた「大いなるもの」とつながる感覚をもたらします。

 

 

ネイチャーゲーム創始者でアメリカのナチュラリスト、ジョセフ・コーネル氏は以下のように述べています。

『多くの人は自然の中で過ごすことを心から楽しみますが、それは自然の中に自身を高める大切なものがあることを見抜いているからです。』

「空と大地が私に触れた」(2016,日本シェアリングネイチャー協会)より

 

ホッとして安らぐとともに、自己を超えた「大いなるもの」を感じることは、私たちの心の奥深くにある魂の願い「幸せになる力」「世界を幸せにする力」に光をあてるのかもしれません。

 

 

④癒しのステップ2 「幸せになる力」を感じる

④-1 自分とつながり「幸せになる力」を思い出す

心の奥深くにある魂の願いを思い出すには、自分とのつながりを取り戻す必要があります。

現代の私たちは、知らず知らずのうちに自分とのつながりを忘れ、他人軸で生きていることがあります。

 

森は、そこに入るだけで癒しをもたらしますが、「心地よさ」を大切にすることで、より積極的な快適性、そして調和感を得られます。

 

自分の快適感、調和感を大切にするという考え方から、NPO法人日本森林療法協会は「森林療法」ではなく「森林セルフケア」という名前で普及活動を行っています。

 

セルフケアで大切なことは、しっかりと感覚を研ぎ澄ませること。五感の刺激あふれる森の中で感覚をとぎすまし、自分にとって心地よいこと、心地よくないことを観察をすることは、自分とつながる大切なプロセスです。

自分とのつながりが深まれば深まるほど、自分自身の奥から答えがやってくるようになります。あなたにとって何が大切なのか、他の誰かに教えてもらわなくても、あなた自身は答えを知っているのです。

 

誰かが森に行った方が良いと言ったから。

良いデータがあるから。

有名人がパワースポットだと言ったから。

・・・。

 

それも楽しそうですが、自分が行きたいと感じる、行ってみて良かったと感じることは大切な財産となります。

 

自分の感覚を信じることは、自分をあるがままに受容すること。一人ひとりが自分の大切さ、かけがえのなさを抱きしめるとき、魂の願いである「幸せになる力」が引き出される素地となるのでしょう。

 

それは、植物療法でも同じことですね。

 

④-2 シャドーを統合して自分とつながる

「シャドー」とは拒絶/排除/抑圧されている心の側面で、多くは怒りや悲しみや妬みなどの否定的な感情です。それらを自己の一部として統合する試みが「シャドー」への取り組みです。

 

自分の否定的な感情を拒絶/排除/抑圧していたのでは、真に自分とつながることはできません。

ところが「シャドー」との対話は時に厳しく、根性を必要とします。

私に「シャドー」と向き合う勇気をくれたのは、自然の中での体験でした。自然界は何も言わずに自分をありのままに受け入れます。批判も否定もアドバイスもありません。

自然界に無条件に受け入れられる体験は、「大いなるもの」への信頼、そして「シャドー」をも信頼する勇気に繋がっていると感じます。

 

 

⑤癒しのステップ3 「世界を幸せにする力」に気づく。

現代社会には多くの問題があり、自然界も危機にさらされています。私たちの魂は、自然界をも含めた「世界」を幸せにする力を発揮することを望んでいます。

個人個人がホッとし、安らぎ、個人の「幸せになる力」を感じられたなら、さらに奥に存在する魂の願い「世界を幸せにする力」への扉が開きはじめます。

森で癒され、自分とつながり、「幸せになる力」を感じた体験は社会問題にも取り組む勇気をくれます。

心の問題に取り組むことが、エコロジーの問題を超越する。

人間と人間とがガチンコで自分の願いと繋がり合ったその先に、社会の調和が現れてくる

 

私は、ようやくその扉に手をかけたところです。完全に扉を開く勇気はまだなく、閉じたり開いたり、扉の奥の世界をのぞいているという感じでしょうか。

それでも、自己否定の塊だった自分が、ようやくここまで来たなぁと思っています。

 

 

⑥終わりに

世界を救いたいと思ったら、まずは森で癒されてみませんか?

 

ところがどっこい、実は、救済を必要としているのは世界ではなく、私だけだったりするのですが・・・。

 

心と魂の癒しの旅は、生きている限り続いていきますね。

今回の生でどこまで行けるのか、お楽しみです。

 

「世界は救済を必要としていない」 ケン・ウィルバー

癒しとは『精神的・肉体的な病苦からの解放、魂や心の救済』⇒癒すを定義する

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事