「インテグラル理論」からみた森林療法

最近、「インテグラル理論からみた森林療法」について2度ほどお話させていただきました。

1度目は2021年8月22日、NPO法人日本森林療法協会のレベルアップセミナーにて。

 

2度目は2022年3月27日、NPO法人ホリスティツク医学協会の植物療法研究会。

 

私がケン・ウィルバーに興味をもったきっかけは、2015年の降矢先生の「インテグラル(統合)理論・実践編~ボディ編、スピリット編」というセミナー報告でした

なぜ、ウィルバーが転換したかといいますと、

~中略~

「トランスパーソナル(超個)」の領域の心理学を行ってきたところ、「パーソナル(個)」をある程度作った人がさらにその先(上)のスピリチュアルとか悟りの境地へ向かうためのものはずが、パーソナルにも取り組んでいない「プレパーソナル(前個)」段階の人がパーソナルを作るプロセスをワープしてくる場所になっていることに気づき、トランスパーソナルの前に、「統合された個」をつくるための「インテグラル(統合)理論」の必要性を痛感したためです。
(http://holistichealthinfo.blog137.fc2.com/blog-entry-72.htmlより)

 

プレパーソナル→パーソナル→トランスパーソナルという発達の考え方は、

他者を大切にすると自分を大切にできない vs 自分を大切にすると他者を大切にできない

と板挟みになっていた私にとって、自分を大切にしながら他者ともつながるという第三の道を指し示してくれました。

 

その後、ホリ協の講座で学び、

 

さらにウィルバーの『進化の構造』は、自然ファーストの環境保護と直感ファーストのスピリチュアルに対する長年の疑問にきれいに答えてくれました。

 

ウィルバーの意識の発達は「反復説」

インテグラル理論の面白いところは、個人の意識の発達が人類の意識の発達と並行関係にある、とするところです。

個人としての意識の発達

①   プレパーソナル(前個)段階

生物体(身体)から心の誕生まで。胎児、乳児、幼児へと成長するとともに物質であり生物である自分を理解し、さらに心を理解できるようになる。しかしまだ他者から自分の価値を与えられる他人軸の段階。

②   パーソナル(個)段階

生物体と心が明確に差異化し、心を使って世界を認識し、関わる段階。自分で自分に価値を与える、自己受容、自分軸の段階。その上で他者が他者であることを認め、多様性、相互関係の理解できるようになる。

③    トランスパーソナル(超個)段階

生物体と心が新たに統合する段階。私は全体の一部、ワンネスを感じる。大我とは無我である(禅)、色即是空空即是色(般若心経)。他者を信頼し共存する段階。

 

人類としての意識の発達

①    プレパーソナル(前個)段階

(1)古代的-本能的段階:最初期の人間社会

(2)呪術的-アニミズム的段階:精霊と祟りと信じる血族部族社会

(3)利己的段階:力と強さが支配する封建社会

(4)神話的段階:規範と秩序を重視する自集団中心的社会

②    パーソナル(個)段階

(5)合理的段階:科学的,客観的,法人型国家(ルネサンス、市民革命を経て誕生)

(6)多元的段階:多視点的,多様性,相対的視点を持つ意識

(7)統合的段階:非視点的,しなやかさを持つ意識

(8)ホリスティックな段階:巨視的,大いなる統一の意識

③    トランスパーソナル(超個)段階

生物体と心が統合する、自我を超えて意識が拡張する段階。

 

合わせるとこんな感じになります。

 

「反復説」は、人間の胎児は魚類から哺乳類への発達を繰り返す様子から、生理学分野でエルンスト・ヘッケルが唱えたものです。

wikipediaエルンスト・ヘッケルより

 

個体発生は系統発生を繰り返す。

という言葉が有名ですね。

 

生理学と同じように、人間の意識も個人の発達は人類の発達を繰り返すというのです。

私はとても興味深いと思っています。

 

インテグラル理論とは「全象限、全レベルを統合する理論」

さて、インテグラル理論は一言で言うと『全象限、全レベルを統合する理論』です。

詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。

ウィルバーが、シュタイナー並みに熱く語っています。

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感想(1件)

①全レベル

ウィルバーのレベルとは、宇宙におけるスピリットから物質界、生物界の誕生、そして先ほど紹介した人類の意識の発達という垂直的な時間軸を意味します。

 

アセンションヘと向かう、人類の意識です。

 

この意識をすべて統合しようとするのが、「インテグラル理論」です。

 

②全象限

象限(Quadrant)とは水平的に物事をとらえる4つの側面です。

  • 外面的・個的
  • 外面的・集合的
  • 内面的・集合的
  • 内面的・個的

垂直軸と合わせて図にすると以下のようになります。↓

 

全象限も、4つの側面すべてを意識に入れて統合しようとするのが、「インテグラル理論」です。

全レベル、全象限をAll Level All Quadrantから「ALAQ」と呼ぶこともあります。

 

インテグラル理論(全象限、全レベル)からみた森林療法

前置きが長くなりましたが、ここからようやくインテグラル理論(全象限、全レベル)からみた森林療法についてお話していきます。

 

まずは、全象限です。

森林療法は、人間を身体(右上象限)だけでなく生態系(右下象限)や社会(左下象限)と関わる存在とみる視点を持っています。また、心の癒しに寄り添うことから人間の内面(左側象限)についても深い理解をもたらします。

人類の絶えざる悪夢とは、右側象限における科学技術(外面的な発達)が常に左側象限における知恵や気遣いや思いやりの成長(内面的な発達)よりも先に進んできたということなのだ。(これが悪夢であるのは、いったん物質的人工物が生み出されると、どんな内面的段階にある個人もそれを利用できるからである。)

私たちが進まなければならない行き先とは、要するに内面領域であり、魂の成長であり、知恵の成長、意識の成長なのだ。左側象限の内面的成長が、右側象限の科学技術の成長と歩調を合わせて進まなければならないのである。

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感想(1件)

より

 

次に、全レベルです。

パーソナル段階の確立過程で『生物界』と『心界』が分離しすぎてしまっているのが現代の危機です。

これでは、物質、生物、プレパーソナル段階、パーソナル段階のすべてを統合することができません。

 

そこで、もう一度『心界』を『生物界』とのつながりをとり戻すのが各種自然療法です。

 

特に森林療法は、私たちが身体だけでなく、生態系の一部であることに思いを馳せる時に大切な役割を果たします。

 

しかし、ホッとする、安らぐ森林療法は最終目標地点ではありません。

 

『生物界』と『心界』の一体化の中でしっかり安らいだら、新たな統合へと向かって進んでいきましょう。

 

ウィルバーも、治癒のスパイラル過程で一度戻って立て直そうと言っています。

治癒のスパイラルは、低次の段階へ退行し、心の土台となる部分を立て直し、さらなる発達を可能にする。

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感想(1件)

より

 

一度戻った後の、再度進むための統合的な世界観は、まだ私にも見えていません。

皆さんと一緒に考えていけたら良いなと思っています。

おわり

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事