森林療法とは
このページを開いている多くの人が、ただ自然の中で過ごすだけで自分を取り戻した経験を持ち、自然の中は気持ちが良いだけではない『何か』がある、そう感じていることでしょう。
その『何か』を健康に生かせたら・・・。
それはきっと、地球にもやさしいものでありそう・・・。
そして、人びとの笑顔が増えるものになりそう・・・。
私は「森林療法」という言葉にそんな魅力を感じました。
でも、「森林浴」と何が、どう違うの?
これは、永遠のテーマです。
まずは、「森林浴とは」から、ひも解いていきましょう。
森林浴とは
『森林浴』という言葉は、1982年、当時の林野庁長官が「自然休養林などの国有林を積極的に活用し、森林レクリエーションを楽しみながら健康な体作りをしましょう。」と呼びかけた『森林浴構想』がきっかけと言われています。
この言葉は、日光浴や海水浴などのようにとても親しみやすく、すぐに一般の人々の間に浸透しました。現在では、森林浴は気持ちのよい、健康に良いこととして広く認識されています。
森林浴は、森林に浸って気持ち良いと感じるものですが、森林療法は「療法」としての目的を持って森林に行き、活用する意味合いが強くなります。
森林療法とは
では、「療法」としての目的、活用とは、何を意味するのでしょうか。
私が2016年まで理事をしていたNPO法人日本森林療法協会では、森林療法を『健康のために森林を活用すること』と定義しています。
森林の活用には、林業から、登山、染色やクラフトまで、様々な活動があります。
健康のためにできることは、食事・運動・休養をはじめ、ボディマッサージやハーブ・アロマまで、いろいろあります。
この両者が重なり合う部分が森林療法だと考えています。
だから、「療法」としての目的は、「健康」です。
健康には、病気の治療だけでなく、健康増進、福祉・療育の分野も含まれるでしょう。
WHOの定義での肉体的、精神的、社会的に満たされた状態といえます。
WHO(世界保健機関)の健康の定義
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)
以上の森林療法の定義は、小さなNPO法人が、この先どんな活動をしていくかを考えていたときに、理事たちで話し合ってたどり着いた言葉です。
ですから、同じ「森林療法」というキーワードで活動している人々でも、違う意味合いで使っている場合もあることを、ご留意ください。
森林療法と環境教育(自然ガイド)の違い
森林療法と同じように人と自然をつなぐ活動に、環境教育(自然ガイド)があります。
もし、自然が大好きで自然のすばらしさを伝えたい~と思っているのでしたら、ぜひ、環境教育(自然ガイド)の扉もノックしてみてください。
いろいろな方とお話をしていて、森林療法よりも環境教育(自然ガイド)の方が向いているなぁと感じることがあります。
環境教育と森林療法は、とてもよく似ています。
どちらも野外での活動で、心に働きかけます。
どちらも人と自然をつなぐ活動です。
だからこそ、「どこが同じでどこが違うのか」を明確にすることで活動の目標が定まり、さまようことが少なくなって自分の思いも届きやすくなります。
私が感じている違いは、入口の違いです。
環境教育の入口は「自然への気づき」、直近の目標は「自然を愛する」であり、
森林療法の入口は「自分(心と体)への気づき」、直近の目標は「自分を愛する」だと思います。
入口は違うけれども、たどり着く先は「自分と自然との一体感」、「自分は自然の一部である」と感じる場所。
その感覚こそが、「癒し」の第一ステップなのでしょう。
環境教育についての詳細はこちら↓
かく言う私も20年前は自然ガイドを目指していた頃がありました。(遠い目・・・)
森林セラピー®とは
ご参考までに、「森林セラピー®」は、NPO法人森林セラピーソサエテイが「医学的な証拠に裏付けされた森林浴効果のこと。」と、定義しています。
似たようなNPO法人が二つあってややこしいですが、まぁ、人間社会のやることなのでいろいろなことが起こるものです。
私は、どちらかである必要はないと思っています。
「自然の中にいると元気になる。」
その思いを具体化して、他の人とも一緒に元気になれたらいいね、という思いで、皆さん活動しています。
森林セルフケアとは
ところで、森林療法は「健康のためにできること」の一つであり、代替療法とひとつともいえます。
代替療法とは
代替療法とは、今の日本では、近代西洋医学以外の医学・治療法すべてを指します。
例えば、アロマセラピーのトリートメントや、鍼・灸、整体などのボディーワーク、漢方薬、ハーブ ティ、健康食品、食事療法などの服用するもの、カウンセリングなどの心理療法、さらには、免疫療法、温泉療法など、様々なものがあります。
代替療法の特徴は、人間が本来持っている自然治癒力に働きかけ、生活習慣などのライフスタイル、生命観、宇宙観にも変化を及ぼす場合があることです。単に身体的な健康だけでなく、こころの奥深くに癒しをもたらし、健康増進や予防医療の分野で応用されています。
また、西洋医学の枠組み(客観性、論理性、普遍性)ではとらえにくいため、個人の感受性に影響されやすいという特徴もあります。
客観性とは一目でわかる数値のことですが、癒しという感覚はなかなか数値で表すことができません。
また、なぜ効果が出るのかということについて論理的に説明できないものも多くあります。
さらに、鎮静効果がある成分が入っているラベンダーの香りで良く眠れるという人もいれば、雑巾の匂いみたいで落ち着かないという人もいるというように、データどおりにならないのが代替療法の世界です。
そこには、個人がもつ価値観や、経験が複雑に絡み合いながら、影響を及ぼしています。
そこで、大切なのがセルフケアです。
セルフケアとは
セルフケアとは、自らが自立的に生命や健康生活を守ろうとする意思とスキルを持つことです。
《セルフケアの流れ》
①自分で選ぶ・・・健康増進や代替療法の知識、スキルを学び、自分の体、健康状態を感じて、今の自分に本当に合うものは何かを自分で選び取る。
②自分で実施する・・・自分のために時間をとって、ハーブティを飲む、アロマの香りをお風呂で楽しむなど、誰かに癒してもらうのではなく、自分で実施する。
③自分で検証する・・・実施した結果、どんな変化が起きたかを自分で感じ、体調の変化、温まったのか、冷えたのか、落ち着いてリラックスしたのか、さっぱりして元気がでたのか、を自分で検証する。
このサイクルを繰り返すうちに、自分自身への感受性が高まり、自分の力でよりよく生きる力を高めることができると考えられています。
大切なのは、自分でしっかり感覚を研ぎ澄ませることです。
森林セルフケアは森とのつながりの中で実践できるセルフケアです。
森林セルフケアとは、森に行って自然に無理なく自分自身をケアする健康法です。
と、定義しています。
森は、そこに入るだけで癒しをもたらしますが、
「心地よさ」を大切にすることで、より積極的な快適性、そして調和感を得られます。
自分の快適感、調和感を大切にするという考え方から、NPO法人日本森林療法協会は「森林療法」ではなく「森林セルフケア」という名前で普及活動を行っています。
森林セルフケアで大切にしていること
森林セルフケアでは、「癒すひと」と「癒される人」という構造ではなく、「自分で森に行き、自分で健康になる。」ことを大切にしています。
森に行き、まずは誰よりも自分自身の心と体の健康について考え、自分が健康になるのはどんな森で、どんなプログラムなのかを自分で見つけること。だれかに癒されるのではなく、自分の癒し方を自分で見つけること。
森林での活動は、様々なものがあります。私が実施している森林療法セルフケア体験会でも、いくつかのメニューを実施します。いろんなメニューの中から、自分が快適だ、調和すると感じたことを健康のために取り入れることをお勧めしています。
フィールドも同じです。
ときどき、血圧の高い人にはこんな森、うつっぽい人にはこんな森という指針が欲しいという声を聞きますが、自分が心地よいと感じるフィールドを自分で探すのが、森林セルフケアです。特に、森林の健康効果は個人の感受性に左右されることが多いだけに、セルフケアの視点が大切です。
おわりに
「森林療法」という響きに誘われて足を踏み入れ、ガチで心を揺さぶられる数々の体験から、『森の癒しってなんだろう?』というギモンに全力で取っ組み合いをしてきました。
そして、いつしか心と魂の癒しの世界への扉が開き、今はそちらの世界を一歩一歩踏みしめて歩いています。
もちろん、その歩みを支えているのは、大自然で癒された体験です。
プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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