SDGsと森林療法
毎年11月に行われる清里ミーテイングは、公益社団法人日本環境教育フォーラムが主催する、全国から自然ガイドさんが集まる環境教育業界の一大イベントです。
持続可能な開発目標(SDGs)がテーマだった2017年11月、ここで森林療法のワークショップを開催しました。
SDGsと癒しがどう関わるのか、必死に考えた2017年秋の記録です。
癒しは『エンパワメント』向上でSDGsに関われるかも。
2015年に「国連持続可能な開発サミット」で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げました。
自然の中で癒されるという体験は、持続可能な開発目標とどう関係するでしょうか。
上記の17の目標にあるように、現代社会には様々な問題があります。
「癒し」は、個人の課題を自分で解決し、社会的技術や能力を獲得する
『エンパワメント』
を向上する可能性を秘めています。
それは、「幸せになる力」とも言えます。
私のワークショップタイトルは『森林療法×環境教育~癒しが持つSDGsへの可能性』。
自然の中で癒されるという体験をSDGsに生かすことはできるでしょうか。
癒しは、各自が本来の力を取り戻す可能性を秘めています。
それは、個人の課題を自分で解決し、社会的技術や能力を獲得することかもしれません。
こちらの本を読みながら、内容を詰めていきます。
↓
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SDGsと開発教育:持続可能な開発目標ための学び
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だからのびやかに踊ってください。~「もし世界が100人の村だったら」より
だからあなたは深々と歌ってください。のびやかに踊ってください。
踊っている時は消費しないし、何も買わないし資源を使い果たさないし、汚染しないし、誰も搾取しない。
踊っている時は、経済からも経済的なスタイルからも離れている。
踊るのに余暇は必要だが、富はいらない。
踊ることは他人が貧乏であることに依存したり地球を壊したりせずに、人々に喜びと満足を与える
数多くの活動のシンボルになれる。
SDGsと開発教育:持続可能な開発目標ための学び Amazonより
これは、「もし世界が100人の村だったら」の対訳者ダグラス・ラミスの言葉だそうです。
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世界がもし100人の村だったら
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この本はとても有名なのに、私はこの言葉を知りませんでした。
豊かさとは経済的な富ではかるものではなく、文化的なもの、愛、友情、自由な自己表現がある生活。(ダクラス・ラミス)
「消費しつづける経済の中でしか、豊かになり、幸せになれない。」
という社会通念のなかで、
そんなことない!!
と、ハートは叫んでいるのに、
じゃあ、どうしたらいいの??
という問いには、誰も応えてくれなかった。
だからあなたは深々と歌ってください。のびやかに踊ってください。
なんてあたたかい言葉だろう。
消費するために歌うのではない。
富のために踊るのではない。
ただ、魂の喜びのために歌うとき、私は地球を壊さない。
だから『癒し』は持続可能な開発目標と矛盾しない。
うれしい仮説です。
国連開発計画が提唱する『人間開発』は、みんなの選択肢が増えることでは??
こちらの本からの読書メモ
↓
第5章「教育におけるSDGs」で、『人間開発論』という言葉が出てきます。
人間開発とは、人々が各自の可能性を十全に開花させ、生産的かつ創造的な人生を開拓できるような環境を創出すること。
⇒人間開発とは(国連開発計画のページ)より抜粋
だそうです。
簡単にすると、
「みんなの選択肢が増えること。」
という感じでしょうか。
☆
自分は、
あれもできるし、これもできるし、
あれにもなれるし、これにもなれるし、
あそこにも行けるし、ここにも行ける。
そうなるために、できること、なれるものの幅を広げること。
それが、教育。
経済成長は、この選択肢を拡大するための一つの手段。
必要だけど、それだけじやない。
選択肢が増えることは、幸せを感じる大きな要素です。
自分の可能性を感じることは、人生を信頼し、世界を信頼することにつながります。
貧困とは単に所得が低いということだけではない。
人間の潜在能力すなわち人間として為す諸活動を実現する力の欠如である。
(アマルティア・セン)
人間開発論とエンパワメント
人間開発論では、知識は学習者に内在するもので学習者自身が問題を見つけ、課題方法を探ることのできる力を養うことに重点が置かれる。
(第5章「教育におけるSDGs」から抜粋)
今までの教育は、「外」にある知識を先生が教えるスタイルでした。
読み書きも、
計算も、
歴史も、
科学的知見も。
まずは、「外」にある知識を教えてもらうことが第一歩。
これ、とっても大切な教育の第一歩。
だけど、持続可能な開発を促進するためには、人間の「中」にある知識、解決方法を探る力も養っていこうということですね。
これは、すなわちエンパワメント。
NPO法人日本森林療法協会のミッションです。
エンパワメントの本来の意味は「パワーのある状態にすること」であり、「能力をつける、権限を与える」という意味で使用されていました。
現在、福祉、教育、心理、経営学などの分野で注目されています。
特に、
能力や権限は本人が本来もっているもので、それが社会的制約によって発揮されていなかった。
⇒エンパワメントとはより
と、考えるところが私は好きです。
本来持っている能力を開花させるためには、その人本人が持つ根源にアクセスすることが必要。
自立しろとか、頑張りなさいと元気づけるのではなく、あるがままに受容し、一人ひとりが自分の大切さ、かけがえのなさを信じる自己尊重から始まります。
森の中では、心が開かれることで、自己尊重しやすくなります。
森という空間の中で自分の心にしっかりフォーカスすると、自分が抱えていたものや様々な感情に気づいていきます。
自分の抱えてきたもの、感情を語ることができると、そこから新しい一歩が踏み出せるようになるのです。
『知識は学習者に内在する。』(上記の本の言葉から。)
その『知識』は、サイモントン療法での「内なる叡智」であり、U理論での「内なる知」。
森で心を開くことは、この『内在する知識』につながりやすくなります。
自己の選択する自由と潜在能力を最大限に伸長する・・って、難しい。
人間開発論においては、自己のおかれた状況を認識し、考え、自己の選択する自由と潜在能力を最大限に伸長させられるような教育それ自体が開発の目的であり、なおかつ人権であると捉えられる。
(第5章 教育におけるSDGsより抜粋)
《参考》SDGs目標4:「質の高い教育をみんなに。』~すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し生涯学習の機会を促進する。
なるほど~~~とは、思うけど、
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自己の選択する自由と潜在能力を最大限に伸長する。
って、けっこう難しい。
明日食べるものに困らなくて、夜、寝る場所に困らない生活をしていても、自分に制限をかけてしまう時がある。
自分にOKを出せない時もある。
やりたいことを言うのに勇気が必要な時がある。
それでも、自分の選択に自由を与え、自分の可能性に気づくとき、ヒトは豊かな喜びに満たされていく自分を感じることができるのです。
だから今、癒しとかスピリチュアリティが求められているのでしょう。
⇒癒しとは
私の体験談はこちらから
マズローの「自己超越の欲求」を満たしたい気持ちが持続可能な社会をつくる。
徐々に、森林療法とSDGsをつなぐキーワードが見えてきました。
それは、自尊心 selfesteem。
SDGs × 自尊心で検索していたら、とっても共感できる文章に出会いました。
↓
僕が見たいのは、こんな世界です。
自らの内面を変える勇気や自尊心といった自らのリーダーシップに目覚めた人達が、人間本来の学ぶ力を発揮し、
国や立場を超えて、協調と対話、お互いの強みを活かし合うことで、貧困の解決に取り組んでいる。
持続可能な社会を実現するためには、その担い手が必要です。
上記の文章は「その担い手ってどんな人?」という問いに、
自らの内面を変える勇気や自尊心といった自らのリーダーシップに目覚めた人達
と、シンプル&的確に答えています。
その人たちは、マズロー「欲求6段階説」での⑥「自己超越の欲求」や、トランスパーソナル心理学での③「トランスパーソナル」レベルの人たちではないでしょうか。
SDGs(持続可能な開発目標)は17項目ありますが、そのほとんどはマズローの①~④欠乏欲求を「誰も取り残さずに」満たすための目標です。⇒SDGs 17の目標
しかし、欠乏欲求&自己実現を超えて自己超越の欲求を満たしたいと思う気持ちが、経済発展だけでない、持続可能な社会をつくるのだと思います。
と、ここまで考察してきた内容で、当日発表しました。
2017清里ミーテイングポスター発表の記録
おわり
↑ポスター発表で熱弁するワタシ
プロフィール

- 森と魂のセラピスト
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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