ナラティヴ・セラピー体験~「問題」の歴史を言語化する?
コロナ禍が明け、久しぶりに対面ワークショップに参加しました。
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ナラティヴ・セラピー実践勉強会
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私は2015年からプロセスワークを学び、日々の仕事でも使っています。
「私を超えた何か」からのメッセージに気づくきっかけとして使っていますが、プロセスワークは空の椅子に話しかけたり、身体を動かしたり、ある程度のノリの良さを必要とするため、思考派の人々にはちょっと難しいなと思う場面もありました。
そんな時に耳に入ってきた「ナラティヴ・セラピー」。
『narrative』とは、物語、話、叙述などを意味する英単語(名詞・形容詞)です。
直訳すると「物語療法」でしょうか。
Wikipediaより、こちらがわかりやすいので、ご参考までに。
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クライエントによって語られる物語の中で語られる「問題のある支配的なストーリー(ドミナント・ストーリー)」に対して、ユニークな結果(問題に支配されない良い状態)に焦点をあて、積極的な問題解決につながる「代替的ストーリー(オルタナティブ・ストーリー)」を作り上げることで介入します。
ドミナント・ストーリーを「私だと思っているワタシ」、オルタナティブ・ストーリーを「生ききっていないワタシ(シャドー)」とすると、全体性へと向かう道の一つと考えられます。
ストーリーを言葉で語るので、思考派の人にも合いそうです。
ナラティヴ・セラピーと他の心理療法の比較について
ここで、ちょっと閑話休題。
ナラティヴ・セラピーでは、あまり他の理論と比較することを推奨していないようです。
ナラティヴにおける差異を発見する旅に出るための準備をしようと思うのであれば、大学院や専門的実践においてすでに学んだ「比較対照」する見方をいったん保留にすることが賢明でしょう。
あなたが本書を読んでいる最中に、たとえば「おや、ここは、スミス教授が認知行動療法について講義したことと似ている。」と思いついたら、そのときは私たちが旅をしているポスト構造主義の領域から離れてしまっていることに気づく必要があるのです。
『ナラティヴ・セラピストになる p65』S. マディガン著より
ポスト構造主義は、ポストモダン(後-近代)と、ニアリーイコールで良いみたいです。
リオタールが『ポストモダンの条件』 (1984) を記した前後からポスト構造主義をポストモダンと呼ぶようになる。しかし内容を見てもポスト構造主義との大きな違いはない。(wikipedia『ポスト構造主義』より)
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ポスト構造主義≒ポストモダン(後-近代)は、ウィルバーの意識の発達によれば、近代合理主義の後なので、「⑥多元的」段階のあたりです。
『インテグラル理論』ケン・ウィルバー より
ウィルバーは、「⑦統合的」段階に進むためには、新しい統合の能力 (差異の中に同一性を見出す能力)が必要であると述べています。
また、このあとの段階を「構築的ポストモダニズム」と呼び、「多様性の中の統一性という見方」という言葉を使っています。
ポストモダニズムは、相対主義や多元主義、そして文化的多様性という見方に含まれている重要な真実を伝えることで、多種多様な声が豊かに織り合わされた世界へと向けて、扉を開いた。
他方、構築的ポストモダニズムは多元主義によって解放された多種多様な文脈をとりあげながらも、そこからさらに一歩進む。
そうした多種多様な文脈を互いに織り合わせ、相互に関係し合ったさまざまな網の目へとまとめ上げるのである。
すなわち多元的で相対主義的な見方から統合的でホリスティックな見方への移行である。
こうした多様性の中の統一性という見方こそが、地球全体が互いに結びついていることを明らかにし、広大なホロン階層がすべてを抱擁しながら互いを豊かにしていることを明らかにするのである。
『インテグラル心理学p446』ケン・ウィルバー(太文字原文まま) より
ナラティヴ・セラピーの理論的背景である社会構成主義に関する著作を多数発表しているケネス・J・ガーゲンも、
社会構成主義がいわゆ「ポストモダニズム」とイコールであるとは明言していない。むしろ、「何でもありの相対主義」という側面を批判されたポストモダニズムと一線を画すことは、ガーゲンが提示する社会構成主義にとって重要なことである。『ナショナリズム論 社会構成主義再考p142』原百年より
と言っているそうなので、ナラティヴ・セラピーとその他の心理療法の同一性、統一性を考察する言い訳とさせていただきます。
ナラティヴ・セラピーとロジャースの来談者中心療法
産業カウンセラー養成講座で学んだカール・ロジャースの来談者中心療法では、クライエントの話を丁寧に傾聴することを学びました。
来談者中心療法では、クライエントの言葉を大切にして、そのまま伝え返しをします。
それは、オウム返しとは違います。
「あたかも as if」その人であるかのように、クライエントの話を共感するために聴く姿勢です。わからないことは質問します。
それは、
クライエントの話に後ろから、ぴったりついて行く感じ。
(これはちょっと違う~)
何が起きているのかにアウェアネス(気づき)を持ちながら、
「場についていく」
というのは、いつでも、どこでも同じだなと思いました。
「問題」の歴史を質問で言語化してみよう~
プロセスワークでは、「私を超えた何か」がノックしている気がする扉を、身体感覚、人間関係、身体の動きなどから探っていきます。色、音、質感など五感をフルに使って、「私を超えた何か」からのメッセージを探ります。
ここかな~と思って開けた扉の先に何もなければ、「間違えました~」と扉を閉めて、別の扉を探します。
ナラティヴ・セラピーの扉の開け方は、「質問」。
人が問題ではなく、問題が問題である。
という姿勢で、「問題」を主語にしていろんな質問をしていくことで、問題が人から離れた感覚になっていきます。
人が心の中で感じていた事柄を言語化して客観視できるようにすることを、心理学では「外在化(がいざいか)」と呼びます。
「問題」を主語にした質問で「問題」を客観視できるようになると、「代替的ストーリー(オルタナティブ・ストーリー)」が、生まれてくるみたいです。
おそらくそれは、今まで生ききっていなかった自分が紡ぐ新しいストーリー。
ストーリーなので、時間軸があります。
今まで私は、その瞬間を五感感覚を増幅(アンプリファイ)していましたが、時間、すなわち歴史を感じる質問はしたことがなかったことに気がつきました。
その人が「問題」としていることの歴史。いつから、どんな風に、どんな影響をそのひとに与えていたのか。どんな距離で存在していたのか。
新しい視点をもらった気がします。
ちょっとだけ意識して過ごしてみようと思います。
多種多様な文脈を互いに織り合わせ、相互に関係し合ったさまざまな網の目へとまとめ上げる
に向かう道で食べるきびだんこみたいなものですかね。
プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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