マインド≒思考を鍛錬する~認知再構成法のススメ
このHPでは、「心」を「思考」と「感情」に分けて考えています。
幸せを感じるのは、主に「感情」の仕事です。
感情を感じることで、心の癒しにつながることはお話しました。
今回は、思考と心の癒しとの関係をお話します。
思考などの認知機能を研究する心理学を認知心理学といいます。コンピュータの情報処理理論を応用しています。
このページでは、ここから先は認知≒思考として話を進めていきます。
「ニアリーイコール≒」のヒミツはこちら↓
私たちの心が癒されない背景には、ネガティブで硬直化した思考のクセや、習慣化された行動パターンがあることが知られています。
心理学では、日常の体験を「環境からの刺激」と「4つの反応(思考・行動・身体・感情)」の連鎖ととらえます。
「4つの反応」のうち、身体と感情の反応は自分でコントロールすることは難しいですが、思考と行動は意識して変化させることが可能です。
思考と行動に働きかけて、出来事である「環境からの刺激」に対して、柔軟な思考やストレスの少ない行動をできるようになる心理療法が認知行動療法です。
ここでは、「思考」への働きかけについてお話しましょう。
ともすると、癒しの世界では悪役になりやすい「思考」。
ですが、意識の力で鍛錬することができるのも「思考」です。
思考の鍛錬①~多様な視点
通常、私たちは「思考」を通してこの世界を把握しています。この思考がネガティブな傾向にあった場合、なかなか心が癒されることはできません。
たとえば、よくある小咄ですが、コップに水が半分入っている場合を考えてみましょう。
①コップに水が半分入っていることをみる。「環境からの刺激」
↓
②半分しか入っていないことに悲しさ、怒りを感じる「感情」
※ちなみに感情はコントロールできません。
ここで「半分入っていることに感謝して嬉しく感じましょう~。」というムリヤリポジティブは本当の感情を無意識領域に押し込んでしまうだけなのでオススメできません。悲しいものは悲しい、怒りは怒りとして、その存在を認めることが大切です。
↓
③そこから「思考」が作られる。
・こんな少量飲んでも意味がない。
・私は大切にされていないんだ。
・水はいっぱいに入れるのが普通だ。
これらの思考には、「いっぱい水が飲みたかったのにぃ~!」という恨み節の「感情」が反応していて、あまり幸せを感じることができません。
ではここで、「思考」を鍛錬してみましょう。なるべく幅広い視点から思考してみます。
・本当はいっぱい飲みたいけど、半分あってよかった。
・足りないから二杯目をお願いしよう。
・水を用意する人も忙しかったんだろう。
・たまたま水が切れていたのかな?
いかがでしょうか。
なんとなく、「いっぱい水が飲みたかったのにぃ~。」という「感情」から離れていく感じがしませんか?
この方法を「認知再構成法」と言います。
私たちは「思考」を鍛錬することで、視点をどんどん多様化することができます。特定の立場にとらわれず相手の立場になって考えることができ、思い込みや決めつけも少なくなります。
「思考」の多様化は他者理解も共通認識もない単なる多様性の尊重ではありません。
私たちは「思考」を使って自分から見えている世界を記述し(自己理解)、「思考」を使って他者の視点に思いを馳せ、他者を受容することができます(他者理解)。他者理解は感情を奥深く成熟させ、「シャドー」へ取り組んだときの大きなサポートとなります。
そして、多様な視点を持てば持つほど、「思考」はどんどん精妙、微細、精微になり、透明に近づいていきます。ついには、「思考」の奥にある精妙で神聖で高次な虚構、「スピリット」の領域を感じられるようになります。
思考の鍛錬②~原因論から目的論へ
目的論とは「世界のすべての事物の生成変化が、大いなる目的を目ざして運行している」という考え方をいいます(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説⇒コトバンク「目的論」
『嫌われる勇気』で注目された心理学者のアドラーは
『人の生活は、その人の持つ目的によって規定され、その人の思考や感情、意思や夢などは、すべてその人がこれまで持っていた目的に向かって決められ、方向づけられている』と記しているそうです。(⇒目的論-アドラーの教え)
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え [ 岸見一郎 ]
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しかしこれは、なかなか簡単に理解できるものではありません。
そこには、コペルニクス的な「思考の大・転・換 !!」が必要だと思うんです。
『嫌われる勇気』の中では、以下のような例が紹介されています。(抜粋ですが、私なりの解釈が入ります。)
《ひきこもりの青年について》
不安だから外に出られない。【原因論】
↓
親に大切に扱ってもらう目的のために、外に出なくするために不安という感情を作り出す。【目的論】
《コーヒーをこぼしたウェイターに怒鳴りつけた青年について》
一張羅の上着を汚されたから、怒って怒鳴りつけた。【原因論】
↓
無抵抗な相手をより安直な手段で屈服させる目的で、大声を出すために怒りの感情を作って、使った。【目的論】
《短所ばかりの自分のことを嫌いな青年について》
短所が多いから、誰も自分のことを好きになってくれない。【原因論】
↓
他者から嫌われ、対人関係の中で傷つかないという目的で、自分の短所を見つけ、自分のことを嫌いになり、対人関係に踏み出さない。【目的論】
まるで私のことのように耳が痛い話ばかりです。
当初、「すべてに意味があり、最善が起きています。」と聞いても感情が反発して、出口のないネガティブ思考に陥っていました。
↓
・今の、この、つらい出来事に意味があり、最善だなんて、絶対に認められない。
・もし私の目的のために出来事が起きているのなら、どーせ、私が悪いんだ。
・だったら、私は絶対に幸せになれないんだ。
とってもしんどい「思考」です。
だけど、今、目の前の出来事に変化を起こすことができるなら、目的論を取り入れてみようと思いました。これは思考です。感情はついていくことはできませんが、思考なら、意識の力を使って違う視点から考える、認知を再構成することができるんです。
そして、
「もし、今、最高最善が起きているのだとしたら、その意味はなんだろう。私にとって、私の魂にとって、どんな目的があるのだろう。」
望まない現実が起きたとき、できるだけそう問いかけていきました。
相手の立場に立ってみたり、俯瞰した気持ちで眺めてみたり、いつもと違う視点で意味や目的を考えることは、かなり根気と忍耐を必要とする難しい作業でした。
しかしながら、徐々に徐々に、起きる出来事は同じだけど、違う視点で考えると苦しさが少なくなることに気がつくようになりました。そんな小さな気づきを積み重ねていくうちに、少しずつネガティブ思考が少なくなっていったように思います。
思考の鍛錬には胆力と時間が必要
思考の鍛錬にはけっこう胆力、粘り強さを必要とします。
思考の胆力強化には、認知再構成法以外にもいくつかの方法があります。私が体験したものは、サイモントン療法でのビリーフワーク、バイロン・ケイティのザ・ワークなど。
新しい思考は慣れるまでに時間がかかので、サイモントン療法では、実際に「慣れるまでメモを持ち歩きましょう。」と言われました。最近、2013年当時のビリーフワークのメモが出てきましたが、かなり練習した跡が見られました。
がんばったなぁ・・・、わたし。
でも、思考の鍛錬だけでは難しい時もある。
心の癒しには「思考」の鍛錬は必要ですが、「思考」だけが大切だとは思っていません。
思考の鍛錬をしようと思っても、どうしても感情がついていかない時もあります。強い感情が邪魔をして、違う視点を得られない時もあります。
そんなときは、感情を扱う「シャドー」への取り組みが役に立ちます。
感情の癒しと、思考の鍛錬。
心の癒しには、両方必要なんですね。
プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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