Seeleはマインド、Geistはスピリット~シュタイナーが語る「目に見えない世界」2つを整理した。
先日、 「アントロポゾフィー医学の体系と薬観」の講座でシュタイナーの訳語の整理をしました。
ホリスティック薬学試論「各種医学の体系と薬観②」第4回(6/8)
すると、メディカルハーブの重鎮である林真一郎先生に褒められましたので、ちょっと有頂天になって、その勢いでブログにもまとめてみました。
もし講座全体を受講したい方は、録画受講も可能ですので、以下のアドレスに「各種医学の体系と薬観②」zoom受講希望と書いてお申込みください。
⇒hic@a7.rimnet.ne.jp
人間の属する3つの世界
シュタイナーは、人間の属する世界をドイツ語で「Körper(ケルパー)」「Seele(ゼーレ)」「Geist(ガイスト)」の3つに分けています。
「Körper」は、どの翻訳でも「肉体」であり、ほぼ一定しています。
つまりBody。
「目に見える世界」ですね。
残り2つの「Seele」と「Geist」は「目に見えない世界」です。
この2つについては、「Seele」は「魂」or「心」、「Geist」は「霊」or「精神」と、訳者によって違う日本語に翻訳されています。
ここが、日本人がシュタイナーを学ぼうと思ったときに迷子になりやすい分岐点だと感じたので、このあたりを整理していきましょう。
「Seele」は、「心」か「魂」か?
まずは「Seele」を語学的視点から見ていきましょう。
Google翻訳では、いきなり「魂 tamashi」と出てきます。
以下、いくつかの辞書から引用してみます。
ゼーレ【(ドイツ)Seele】 の解説
魂。霊魂。精神。
☆
[ゼーレ] [女] (―/―n) ([小]Seelchen)❶ ([英] soul)心, 精神; 霊, 霊魂, 魂.
❷ (…な)人, (…の)心の持ち主; (…の)中心人物; ⸨[複]⸩ 住民.
☆
Seele ドイツ語
1.心、思い、精神。
2.魂、霊、霊魂。
Und also ward der Mensch eine lebendige Seele.
そしてだから人間というものは命のある魂になった。(ルター訳『創世記』第二章第七節より直訳)3.中核、核心、かなめ。
☆
英語の「soul」と同じ語源のようなので、「soul」の意味と語源も調べてみましょう。
soulとは
霊魂、魂、死者の霊、亡霊、精神、心、(知性と区別して)情、感情、気迫、生気
☆
soul 意味と語源
【英語】魂、霊魂、人
「魂(saiwalo)」がこの単語のコアの語源。
中期英語soule(魂)⇒ 古期英語sawol(魂)⇒ 西ゲルマン祖語 saiwalu(魂)⇒ ゲルマン祖語 saiwalo(魂、生命力)⇒ ゲルマン祖語 saiwiz(海)が語源。
ほ~、「soul」の語源は「saiwalo(魂、生命力)」であり、同じ語源に「 saiwiz(海)」がある。英語の「sea」ですね。
私たちの生命は海で誕生したと言われています。
「sea」と「soul」が同じ語源なんて・・・。
ここでしばし感動。。。
で、全体を通して眺めると、「Seele」「soul」の意味には「心」「魂」「霊」「精神」が、すべて混ざって出てきております。
どうやら、物質的肉体以外に人間が持つ「目に見えない何か」を言い表すようですね。生きている間に意識するような「何か」とともに、死んだ後に残る「何か」も含み、ときには人間そのものを表すこともあるようです。
つまり、文脈によって意味合いが変わるということで、ここから先は翻訳専門家の領域になりますので、私はこれ以上は踏み込みません。
シュタイナーの「Seele」
では、シュタイナーは「Seele」をどんな意味で使っているのか?
高橋巌先生翻訳の『神智学』では、
魂の特性は衝動、欲望、感情、情熱、願望、感覚である。
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感想(4件)
とあります。
ということは、「Seele」はかなり現実感のある意識領域を含むもので、「心理学」の守備範囲、つまり「心」or「マインド」に相当しそうです。
ちくま書房シリーズで高橋巌先生が「Seele」を「魂」と訳していたので、長い間私は「Seele」をもっと純粋で神聖なもの、スピリットに近いものをイメージしていましたが、どうやら「マインド」の方が近そうです。
シュタイナーの「Seele」について、哲学者の西平直先生は、以下のように書かれています。
「心性」と訳しても「魂」と訳しても収まりきらないから、「心性(魂)」ないしは「魂(心性)」と訳す。
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感想(0件)より
確かに・・・。
私にとっては、シュタイナーの「Seele」は「心性」くらいがピッタリくるなぁと感じています。
「Geist」は「霊」か「精神」か?
次に「Geist」。
まずは、語学的視点から見てみます。
Google翻訳では、いきなり「幽霊」と出てきました!!
ガイスト【(ドイツ)Geist】 の解説
魂。精神。
☆
[ガイスト] [男] (―[e]s/―er)❶ ([英] mind)精神; 知力, 判断力; 才気
viel ~ haben|才気にあふれている.
❷ ([英] spirit)思潮, 気風; 根本精神, 本質.
❸ (…の)精神〈意見〉の持ち主; (…な)人.
❹ 生気, 精気, 活力; 霊, 精霊.
❺ ([英] ghost)幽霊, 亡霊.
❻ (―[e]s/種類―e) 酒精, アルコール.
どうやら、英語の「mind」「spirit」「ghost」の意味を併せ持つようですね。
これを日本語に訳すのは相当難しそうです。
先の西平先生は、「Geist」について、以下のように述べています。
それを「精神」と訳すか、「霊」と訳すかによって、その色合いがかなり違う。
シュタイナーがしばしば使うdie geistige Weltを「霊界」と訳したら、まるで怪しく、しかし「精神的世界」と訳してしまっては、シュタイナーの文脈が伝わらない。
また、Geisteswissenschaftを「精神科学」と訳せば口当たりは良いが、シュタイナーの思想は伝わらず、逆に「霊学」と訳せば、かなりの誤解を覚悟しなければならない。
はい、本当におっしゃる通りだと思います。
特に「精神」については、非常に幅広い意味合いで使用されます。
☆
せい‐しん【精神】 の解説
1 人間のこころ。また、その知的な働き。「健全な―」2 物質に対し、人間を含む生命一般の原理とみなされた霊魂。たましい。
3 物事をなしとげようとする心の働き。気力。「―を鍛える」「―統一」
4 物事の基本的な意義・理念。「憲法の―」
5 ある歴史的過程や共同体などを特徴づける意識形態。「時代―」「民族―」
☆
中国では、「精」と「神」とを組み合わせた古い漢語であり、元来は元気やエネルギーという意味であった。
これが今日のような「物質」の対義語として使われるようになるのは、明治の日本でドイツ語のGeistなどの翻訳語に選ばれて以来のことである。
☆
広い意味では心や魂と同義で、非物質的な活動的なものをさす。
世界を「目に見えるもの」と「目に見えないもの」に分けたとき、「目に見えないもの」一般を「精神」という言葉で言い表すとなると、「心/マインド」も「魂/ソウル」もみーんなひとくくりになってしまいます。
これでは、
目に見えない領域をさらに「心」と「精神」、もしくは「魂」と「霊」に区別して考えることがアントロポゾフィーの特徴の一つである。
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感想(0件)より
というシュタイナーの特徴が見えなくなってしまいます。
では、「霊」はどうでしょうか。
日本語の辞書では、
れい【霊】 の解説
1 肉体と独立して存在すると考えられる心の本体。また、死者の魂。霊魂。たま。「祖先の―を祭る」2 目に見えず、人知でははかりしれない不思議な働きのあるもの。神霊・山霊など。
これは、ドイツ語のGeistのうち、英語のghost部分に相当すると考えたほうが良さそうで、Geistの一部分しか表せない気がします。
ghostとは
幽霊、亡霊、怨霊(おんりよう)、青ざめた人、やつれた人、(…の)ほんのわずか、ほんの影、ゴースト、多重像、色むら
ちなみに高橋巌先生は、「Seele」を「魂」、「Geist」を「霊」と訳した経緯について、こう述べています。
明治のキリスト教の翻訳家たちが聖書の翻訳をするときに「一霊四魂」と霊と魂を区別しているのがわかったものですから、この伝統に従おうと思い、ギリシャ語の「ヌース」または「プネウマ」、ドイツ語の「ガイスト」を「霊」と訳して、「ゼーレ」(ソウル)を「魂」と訳すことに決めて、そこから始めたんです。
『ユリイカ』第32巻第7号,2000年5月号
ということで、西平先生は、
そこで本書では、Geistを「精神(霊)」もしくは「霊(精神)」と置き換える。
その文脈によって、通りが良い方を前に出し、それをいわば異化するズレをカッコに入れて付け足すことにする。
なるほど。
私としては、「霊性」くらいがちょうど良い感じがします。
「Körper」「Seele」「Geist」は「ボディ」「マインド」「スピリット」
ということで、「Körper」、「Seele」、「Geist」を整理すると、実は、ホリティック医学の「ボディ」「マインド」「スピリット」に相当するのではないかと思うのです。
「体」だけでなく目に見えない「心」や「気・霊性」を含めた“body-mind-spirit”の視点から、さらには社会環境(家庭環 境、職場環境、地域環境)や自然環境(ひいては地球環境、宇宙環境まで)まで含めた全体的(ホリスティック)な視点から健康を考えることが重要となります。
ん?
随分ザックリになってしまったって?
西平先生も以下のように述べているようにですね~、微妙な違いを考察した後はザックリ構図をつかみ取ることも大切なのです。
「心・魂・精神」といった領域の話をする時は、いつにもまして、言葉に慎重でなければなない。
微妙な違いを薄く切り分ける繊細さと、逆に、ザックリ骨太の構図をつかみとる大胆さ。
そのバランスがとれた述語がなくては、話が空回りするだけである。
ということで、「霊体と肉体をつなぐものが魂体である。」とシュタイナーが『神智学』で述べていることを踏まえると、以下のような図にまとめられると思います。
この図が、これからシュタイナーやアントロポゾフィー医学を学ぶ方の参考になれば幸いです。
おわり
プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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