森林療法と環境教育(自然ガイド)は、ゴールは同じだけど、入口が違う

自然の中はただ気持ちが良いだけではなく、『何か』がある、そう感じていませんか?

その『何か』は、人びとの笑顔を増やすもので、地球にもやさしいものでありそう・・・。

だから、自然と人を繋ぐ活動をしよう!!

 

そんな思いから、森林療法の講座にいらっしゃる方は多いです。

でも、ちょっと待って。

 

自然と人とを繋ぐ活動には、森林療法よりもずっと前から「環境教育」があります。

20年ほど前の私は、環境教育の仕事をしたくて数々の自然ガイド体験会、インタープリター養成講座に通い、自然学校に履歴書を送りまくっていたことがあります。

 

環境教育と森林療法は、とてもよく似ています。

どちらも野外での活動で、心に働きかけます。

どちらも人と自然をつなぐ活動です。

 

あえて分ける必要はないというご意見もお聞きしますが、「どこが同じでどこが違うのか」を明確にすることで活動の目標が定まり、さまようことが少なくなります。

自分のさまよいが少なくなれば、思いも届きやすくなります。

 

森林療法を始めた当初、私は自分の中で環境教育と森林療法の違いがわからず、迷いに迷いました。この違いを明確にすることで、「自分が何を伝えたいのか」という思いをお客様に届けやすくなったと感じています。

ですので、ここでは、私が感じる環境教育(自然ガイド)と森林療法の「どこが同じでどこが違うのか」をお伝えしていきます。

 

※森林療法についてはこちら↓

 

環境教育とは

まず、環境教育とはなんでしょうか。

1975年10月、ユーゴスラビアの首都ベオグラードで、環境教育の専門家を集めた「国際環境教育ワークショップ」(通称:ベオグラード会議)が開催されました。この会議の成果として作成された「ベオグラード憲章」では、環境教育の目的を次のように述べています。

環境とそれに関連する諸問題に気づき、関心を持つとともに、現在の問題解決と新しい問題の未然防止にむけて、個人および集団で活動するための知識、技能、態度、意欲、実行力を身につけた人々を世界中で実行育成すること。

長くてよくわかりませんねぇ・・・。

 

私なりに解釈すると、「環境問題に対して行動できる人を育てること。」でしょうか。

この目標に対して、「日本型環境教育の提案」(日本環境教育フォーラム著)では、以下のように段階的な目標達成の方法を提示しています。

 

【第一段階】「関心」(親しむ・気づく)
自然に親しむことや、自然に対する感受性を養うこと。

【第二段階】「理解」(知る)
自然や社会のシステム、環境問題に関する知識を得ること。

【第三段階】「行動」(実践する・守る)
環境問題の解決へ向けて行動を起こすこと。

 

このように、環境教育では個々の活動をすぐにゴールである環境問題に到達させようとするよりも、段階的に前進させていくことが大切であるとしています。

第二、第三段階は、ゴミや環境汚染など具体的な問題への行動なので、森林療法と混同することはありません。

しかし、第一段階の『自然に親しむ、自然に対する感受性』を育む活動は、自然との一体感自分も自然の一部であることへの気づきを目的としているため、癒しの要素を含みます。

ここが、森林療法と同じ目的であり、ゴールの部分です。

 

ヒトは、知っているものしか愛せない。愛したものしか守れない。

確かにそうだなと思います。

だから、環境教育では自然を好きになる、愛することを第一目標に活動していることが多いのでしょう。

子供たちを対象とした活動が多くなるのも、うなずけます。

 

・環境教育は自然に気づき、自然を愛する心を育む。
・森林療法は自分に気づき、自分を愛する心を育む。

では、環境教育と森林療法の違いどこでしょうか。

今、私が感じている違いは、入口の違いです。

 

環境教育の入口は「自然への気づき」、直近の目標は「自然を愛する」であり、
森林療法の入口は「自分(心と体)への気づき」、直近の目標は「自分を愛する」だと思います。

入口は違うけれども、たどり着く先、ゴールは同じ「自分と自然との一体感」「自分は自然の一部である」と感じる場所。

その感覚は、「癒し」の第1ステップです。

 

森林療法に興味を持つ方には、ご自身の心や身体の不調をきっかけとする方が多く、セルフケアとして学んだアロマセラピーやメディカルハーブから植物の癒しに魅せられ、さらには森林の癒しに思いを馳せて興味を持つ方が多いです。

 

 

一方、環境教育に興味を持つ方はもともと自然が好きで、自然の中で生き生きする自分を感じて、その体験を分かち合いたいと願って興味を持つ方が多いと感じます。(私もどちらかというと、こちらでした。)

 

ですが、私たちは自然の一部であるし、自分と自然は切っても切れないものです。

入口は違っても、野外活動の中で自然の存在に気づき、自然と触れ合う中で心に変容が起き、自然と自分が統合していくという過程は、森林療法も環境教育も同じです。

最終的にたどり着く場所は、「自然と自分の一体感」。

 

 

自分を愛することは自然を愛することであり、
自然を愛することは自分を愛すること。

「結局、同じじゃん」

というツッコミ、ハイ、受け付けます。

 

 

意図が変われば、届く思いも変化する。

しかし、入口をどこに置くかによって活動の意図が変わり、お客様に届く思いも違ってくると思うのです。

ご自身が自然の素晴らしさを体験し、「他の人にも自然を好きになって、楽しんでもらいたい。」という願いから森林療法を学ぶ方は多いです。

「楽しい」という気持ちの中には、「自分を愛する」というエッセンスが入っています。

そこに気づいていて、自覚した状態で、自然自分と対峙すると提供する内容も変わってくるのではないでしょうか。

 

 

自然の素晴らしさを体験する活動は、環境教育(自然ガイド)の世界に、ほんっとにたくさんあります。

もし、とにかく自然を楽しみたいなら、私は森林療法よりも環境教育のプログラムをオススメします。

大人向けの活動もたくさんあります。

 

以下のページでは、様々な体験活動を検索することができます。自然体験の専門家が、たっぷりと、あなたを自然の魅力に連れて行ってくれるでしょう。

環境教育フォーラム

自然体験活動推進協議会

シェアリングネイチャー協会

 

自分で「森林療法」とか言っておいてナンですが、癒しやセラピーはその後で良い場合も多いです。なぜなら、自分がほんっとうに癒される体験があってはじめて、他者の癒しを援助できるからです。

ほんっとうに大自然に癒されたら、心の癒しの扉は自動的に開かれていきます。

 

それは、私たちの人類の魂の願いでもあるのです。

 

 

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事