森林療法のエビデンス「フィンランドの研究」

2017年7月『NATURE FIX自然が最高の脳をつくる。(NHK出版)』が出版されました。

著者はアメリカ人で、研究者ではなくジャーナリストです。「自然の中にいるとリフレッシュする。」という感覚を、世界中を飛び回って一冊の本にまとめました。日本での森林セラピー体験談も紹介されています。

今回はこの書籍の中からフィンランドでの報告を紹介します。国土の74%が森林というフィンランドでも、近年都会に移り住んだ人々にストレスの増大、うつ病、肥満という問題が生じるようになっているそうです。

☆注意事項☆

森林療法のエビデンス各ページでの研究紹介は、タイトルも含めて省略する過程で要約者の主観が入ります。引用する場合は必ず原著をお読みください。

リサ・トルヴァイネン(生態学を研究、経済学博士)は、自然には大きな力があることを数値で評価するために、日本の宮崎教授から指導を受け「緑と健康の調査プロジェクト」を実施した。

研究①
〔方法〕都会に暮らす3000人に、自然の中で過ごしたあとの変化をストレス回復度に関する質問紙で尋ねた。

〔結果〕1か月に5時間自然の中で過ごすと最大の効果が得られる結果が出た。

研究②
〔方法〕82人のオフィスワーカー(大半が女性)に、都心、整備された公園、森林公園で30分間散歩し、前後に15分間座観。その間お互いに会話をしないように指示。(人と交流すると心理にいい影響が及ぶため。)

〔結果〕都心ではストレスから「回復」した感覚はほとんど抱けなかったが、整備された公園や森林公園の中では感じた。変化は戸外で15分間座っただけであらわれた。その後短い距離を散歩すると、「回復」した感覚がさらに高まり、持続した。緑がある場所ですごす時間が長いほど気持ちが上向いたという報告が増え、その効果はより豊かな森で過ごした人の方が高かった。

〔考察〕われわれの実験の結果は、都会の広大な公園(5万m2以上)と都会の広大な森林地が、都市部の住民のウェルビーイングに、とりわけ中年女性の健康によい影響を及ぼすことを示している。

(Journal of Environmental Psychologyに掲載)

 

カルヴィ・コルペラ(北欧特有の暗くなりがちな精神状態を改善したいと考えていた。)は、自然の感情に作用する速さを検討した。

〔方法〕被験者に顔写真を見せ、感情を推測するまでの所要時間を測定。幸福を感じると他人の顔に浮かぶ幸福感を素早く認め、恐怖心や嫌悪感を認めるまでには長い時間がかかる。感情を測定するために長年使われている方法である。

さまざまな風景写真を被験者にごく短時間見せ、見せるたびに人物の顔写真を見せて感情を推測してもらった。

〔結果〕豊かな自然の風景写真を見た被験者は、写真の人物の幸福感をすばやく感じ取り、怒りや恐怖というネガティブな感情を読みとるのは遅かった。都会の写真を見たあとにはその反対の結果が出た。

〔考察〕自然の風景写真を見ると、幸福度がすぐに増した。自然の影響により人間は無意識のレベルで感情的な反応を見せる説を裏付けることができた。

 

この本を読むと、世界各国で自然の健康効果が注目され、日本の研究も参考にされていることがわかります。

好奇心旺盛な女性著者は、感想もとても正直です。違う文化の視点から森林の健康効果はどう映るのか、とても興味深いです。皆さんもぜひ読んでみてください。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事