森林療法のエビデンス「認知症」

今回紹介するのは、認知症を含めた高齢者専門の病院である千葉県総泉病院の研究です。

この病院では平成16年頃から病院裏の森を整備して森林療法プロジェクトを実施し、現在までに多くの学会発表がなされています。

今回は院長の高野喜久雄先生が森林療法への思いをつづった日本療養病床機関誌LTC(ロングタームケア)の記事「森林療法のすすめ」から抜粋して紹介します。

☆注意事項☆

森林療法のエビデンス各ページでの研究紹介は、タイトルも含めて省略する過程で要約者の主観が入ります。引用する場合は必ず原著をお読みください。

 

認知症の医療「森林療法のすすめ」

〔はじめに~森林療法の試み〕

認知症患者のケアには多くの方々が悩み、さまざまな「なんとか療法」があるが効果の判断は難しい。特に人間は育った環境、家族構成、その他社会的にいろいろな状況の中で存在しているため効果判定は大変難しい。そんな中で、同一人物の変化をみることは参考になる。

〔対象〕認知症患者9名

〔方法〕病院裏の庭を車いすでも使えるように整備し、平成16年7月~9月までの間に1回40分程度で12回森林療法を実施した。4回までは散策中心、その後は香り、笹細工で遊ぶ、焚き火などで五感を刺激するプログラムを実施。。森林療法前後で認知機能検査のMMSE※1GBSスケール※2をチェックした。

〔結果〕MMSEでは明らかな変化は出なかった。GBSスケールでは効果があったのは9人中6人、各項目別では運動機能9人中4人、知的機能9人中7人、感情機能9人中2人、認知症に共通なその他の症状9人中4人に効果があった。

その他当日の夜はよく眠れた、知的興味のアップ、自発的な行動、輪切りの切り株を病棟の同室者に見せるなどの社会的関係が見られた。

〔考察〕アクティビティケア~思い出療法

野菜の栽培、料理などのアクティビティは、認知症患者の目に輝きと力を取り戻す。

私たちが考える「思い出療法」は、昭和30年代を再現した空間で、懐かしさの中でくつろぎ、なじみの仲間と作業をしながら自分の力を改めて認識していくうちに生まれる「今度は、次は」という「未来への視線」、新たな認識の変化の過程である。

アクティビティや思い出療法と森林療法の間には共通すべきことが多々ある。懐かしい鎮守の森、笹船、四季折々の行事、里山を駆け巡った思い出、焚き火や焼き芋の焦げたにおい。これらも五感と思い出の合体したものであり、思い出療法とリハビリを含めた身体機能を加味した屋外バージョンと考えてもよいのではないだろうか。

(高野.ロングタームケア15(1), 60-66,2007)

【筆者補足】

※1:MMSS(Mini-Mental State Examination=認知機能検査)は、本人の認知機能や記憶力を簡便に測定できる11の項目からなる検査です。

※2:GBSスケール(Gottfries Brane Steen) 運動機能6項目、知的機能11項目、感情機能3項目、痴呆に共通なその他の症状6項目の計26項目を各7段階で客観的な観察から評価する検査です。

学会発表では、さらにフェイススケール(自分の気持ちに一番近い顔の表情のイラストを参加者が選択する検査)の結果も、回を重ねるに従い明るい顔を指示する例が多くなったと報告されています。

2012年には日本慢性期医療学会で看護部から報告があり、病院全体として取り組んでいる様子がうかがえます。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師・森林インストラクター・メディカルハーブプラクティショナー・ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー・日本森林療法協会元理事