「癒し」とは~癒しには3つのステップがある

ハーブや森林療法に興味のあるみなさんは、ご自身が植物で癒された体験を持ち、その体験を多くの人に紹介したいという願いを持っていると思います。

では、「癒し」とは何で、「癒された状態」とは、どんな状態なのでしょうか。

 

「癒し」とは

2005年に森林療法を始めた当初、私の中に「癒し」の定義がなく、さまよいつづけていました。

私がさまよっているのですから、参加者もさまよいます。

 

「せっかくの森の中で、あなたの声がうるさくて癒されませんでした。」

とアンケートに書かれ、帰りの電車を何度も乗り間違えて家に帰れなくなるほど凹んだこともありました。

 

あれから15年、2008年からスピリチュアルの世界に導かれ、2019年からは通信制大学に3年次編入をして心理学を学びました。

紆余曲折を経て、今、私は、「癒し」には段階的なステップがあり、最終的には魂の願いにつながり、この宇宙の進化に貢献することだと思っています。

 

それは自分とつながり、自分自身が持っている「幸せになる力」「世界を幸せにする力」に気づくことだと思うのです。

 

癒しの第1ステップ「ホッとする、安らぐ」

2006年の日本アロマ環境協会のシンポジウムで、私は「癒しとはホッとする、安らぐことだと思う。」と発表したことがあります。

元森林総合研究所の宮崎良文先生は、以下のように述べています。

快適性とは人と環境間のリズムの同調である。

身近な自然と接することにより、自然との間に同調関係が生じ、高すぎる緊張状態が緩和され、本来のヒトとしての姿に近づき、リラックス状態がもたらされる。

 

現代の私たちは人工化された環境や複雑な人間関係の中で、常に緊張状態にあると考えられます。

今いる環境と自分との間に調和を感じ、ホッとして安らぐとき、私たちは「癒された」と感じるようです。

 

欲求段階説で有名なアメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の基本的欲求を5段階にまとめました。

【マズローの欲求5段階説】

①生理的欲求

②安全・安定の欲求

③所属と愛の欲求(社会的欲求)

④承認の欲求(尊厳欲求)

⑤自己実現の欲求

 

このうち①~④までは欠乏欲求とも呼ばれます。

この欠乏欲求が満たされるとき、私たちは今いる環境に調和を感じ、ホッとして安心でき、「癒し」を感じるのだと私は考えます。

 

癒しの第2ステップ「幸せになる力に気づく」

しかし、「癒し」には次のステップが存在します。欠乏欲求が満たされ、心の底からホッとして安らいで癒されたとき、人間の心は次のステップに進みます。

 

マズローはこれを「⑤自己実現の欲求」と名づけました。

生物としての安全が満たされ、社会的動物として所属・愛・承認欲求が満たされたとき、自分自身の力で幸せになる可能性が開かれてくる。

その可能性に気づく「心」を私たちは持っています。

 

それは、生物としての自分、社会的動物としての自分としっかりつながることで得られる自分を大切にする力。

自分勝手や自己愛とは異なる次元での自己受容から生まれる人間本来の力です。

 

2015年、私は「自分自身とのつながりが深まることが「癒し」なのではないか。」と、森林インストラクター東京会の講演で発表しました。

癒しの第3ステップ「世界を幸せにする力に気づく」

ところが、「癒し」にはさらに次のステップが存在します。

 

マズローは晩年に第6段階目として「⑥自己超越の欲求」を提唱しました。

どうやら、人間は個人を超えた「私たち(人間だけでなく地球のすべて)=世界」の幸せを願う生物のようなのです。

 

え? そんなの当たり前?

そうですよね。

だけど、「世界」を幸せにするには、「自分」を幸せにする段階を超えていかなければならない。この段階が意外と難しいのが私たち人間です。

 

マズローの「自己超越の欲求」を源流としたトランスパーソナル心理学の思想家ケン・ウィルバーは、意識を3つの水準に分類しています。

【意識の三つの水準(ケン・ウィルバー)】

(1)プレパーソナル
自我を確立する以前
(マズローの①~④の段階)

(2)パーソナル
自我を確立した水準。
(マズローの⑤自己実現欲求の段階)

(3)トランスパーソナル
自我を超えていこうとする高次の心(意識)の水準。
(マズローの⑥自己超越欲求の段階)

 

トランスパーソナルの水準は、スピリチュアルでのワンネスとか、般若心経の「色即是空、空即是色」とか、禅の「大我とは無我である」のような状態だと推測しています。

 

私たちの魂はトランスパーソナル水準に向かう欲求、願いがあるのですが、それには自我を確立するパーソナル水準を経過し超えなければならないとウィルバーは述べています。

 

2021年の今、私が「癒し」を定義するとしたら、

「①ホッと安らぐ、②「幸せになる力」に気づく、③「世界を幸せにする力」に気づく、というステップを踏みながら魂の願いに近づく旅路を歩いていると感じること。」

かな。

 

まとめ

森で癒されると感じたとき、皆さんはおそらく今いる環境に調和を感じ、ホッとして安らいだと感じていると思います。

でも、「癒し」にはさらなるステップが存在する。

 

森の癒しを広めたいと願うとき、ぜひ、癒しの第2ステップ、第3ステップへの可能性も感じてみてください。

それが、実は森の癒しを広める本物の原動力になるのではないかと思っています。

なぜなら、それが、人類が共通して持っている魂の願いだと思うからです。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事