身体と心をつなぐ「内受容感覚」

身体を感じて癒されたという経験は、皆さんあると思います。

 

今日は、心と身体をつなぐキーワードである「内受容感覚」をご紹介します。

 

これは、1906年にイギリスのチャールズ・シェリントンが提唱した概念です。

彼はシナプスの命名者で、1932年には神経細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した生理学者です。

 

内受容感覚とは

シェリントンは、感覚を機能的に3つに分類しました。

【外受容感覚】五感など身体外部の情報近くに関与

【固有感覚】骨格筋の緊張、平衡感覚など身体の体位に関与

【内受容感覚】内臓や血管の状態の知覚に関与

この分類において内受容感覚とは身体全体のホメオスタシスの状態を意識するためのものとしている。

(寺澤悠理・梅田聡 心理学評論vol.57,no.1,2014 内受容感覚と感情をつなぐ心理・神経メカニズム)

 

内受容感覚は、身体内部の生理状態、すなわち内臓系、自律神経系、ホルモン系、免疫系などの状態を私たちがモニターする感覚です。

あまり耳慣れない言葉ですが、現在では固有感覚も含めて内受容感覚とすることが多いようで、医学生理学業界での深部感覚、内臓感覚とニアリーイコールで良いみたいです。

 

内受容感覚≒深部感覚、内臓感覚

という感じですね。

 

 

 

内受容感覚はカラダの変化を意識につなぐ

私たちは、喜怒哀楽などの感情を感じるとき、私たちはドキドキしたり、ほてったり、キュッとしたり、カラダの変化を感じます。

このとき、神経伝達物質やホルモンのバランス、血圧、呼吸数の変化、筋肉緊張、瞳孔拡大など、肉体には実際に生理的変化が起きています。

 

内受容感覚(interoception)は、このような感情と連動する生理的変化をモニターしています。

通常は無意識的にを感じ取り、自律神経系や内分泌系を調節して一定の状態に保つように調節しています。

 

これが、ホメオスタシス(恒常性の維持)ですね。

 

内受容感覚は、呼吸、痛み、体温、心拍、胃腸の動きなどの生理的な状態に関する感覚や内臓感覚のことである。

この感覚が感情や気分、情動を生成したり、ホメオスタシスやアロスタシス(動的適応性:身体の置かれている状況に応じて変動し適応する機能)を維持したり、意識を形成したりする基礎を構成しているとされている。

(中島香澄 東海大学紀要文化社会学部 vol.5,no.2,2021 適切な内受容感覚の獲得)

 

ところが、身体の不調に意識的に気づいて、適切な行動をとらなければならない時もあります。

水分バランスが乱れていたら、のどが渇きを意識して水を飲む。

 

体温調節が乱れていたら、暑さや寒さを意識して、衣類や冷暖房で対処する。

 

胃酸や消化液のバランスが乱れていたら、胃痛や胃もたれを意識して休む、食べ物の変更などで対処する。

 

などなど。

 

だから、私たち人間が健康を保つためには、無意識での調整はもちろん、意識的な「気づき」も大切です。

内受容感覚は、身体内部の生理的状態を意識に気づかせる役割を果たしています。

 

内受容感覚に関わる中枢神経基盤は、身体に起きている恒常状態からの逸脱を中枢神経、そして意識に上らせる役目を担っていると考えられる。

(寺澤悠理・梅田聡 心理学評論vol.57,no.1,2014 内受容感覚と感情をつなぐ心理・神経メカニズム)

本来、恒常性の維持は意識下で行われるプロセスであるが、身体の不調などに気づき(意識で捉え)、適切な対処行動や受療行動などにつなげられるかどうかも治療や健康を保つ上では重要である。

(神原憲治 〈身〉の医療 vol.1,2015 ストレス反応と心身の気づき)

 

意識的な気づきが自律神経機能を高める

普段は意識することのない内受容感覚。

しかし、どうやら内受容感覚に意識的に気づくことが自律神経機能を高めるようなのです。

内受容感覚を高めるトレーニングで、身体の症状も改善したとの報告もあるそうです。

 

自律訓練法による自律神経への効果も、同じ仕組みかもしれません。

 

ボディから心へのアプローチですね。

 

恒常性を保つ上では意識下の調節機能と意識上の「気づき」が共に重要であり、両者は関係しあいながらその役割を担っている。

~中略~

心身の気づきと自律神経機能は一般に共働的な関係にあるが、病的状態ではこれらの共働的な働きが崩れ、心身の気づきを高めることでその働きが回復する可能性がある。

Schaeferらは、内受容感覚を高めるトレーニングによって身体化障害の症状が改善したと報告している。(Schaefer,Mら Biol.Psychol. 101:69-76,2014)

これらは心身の気づきが恒常性維持機能を高めるという説を支持するものである。

(神原憲治 〈身〉の医療 vol.1,2015 ストレス反応と心身の気づき)

 

身体に働きかけるセラピー、整体、アロマトリートメント、鍼灸などを続けていると、

 

「あれ? そういえば、今日の体調はいいみたい。」

「ん? 今日はなんだか体調がよくないみたいだぞ。」

など、身体の変化に気づくようになった経験はありませんか?

 

ボディのセラピーで変化を経験すると身体感覚への気づきが高まることは、よくあるそうです。

 

さらに、太極拳やヨガなどは、もっと積極的に内側からの身体感覚に意識を向けるものです。

 

まさに「内受容感覚」へのアプローチと言えます。

 

なんらかのアプローチによって、自律神経機能が変化すると心身の気づきも変化し、逆に心身の気づきが変化すると調節機能も変化し、共同的な関係性も回復して恒常性維持機能が高まると考えられる。

東洋医学的アプローチのように、気づきというより直接身体の調整に働きかける方法では、機能的な状態の変化に伴って心身の気づきが高まることが臨床上経験される。

(神原憲治 〈身〉の医療 vol.1,2015 ストレス反応と心身の気づき)

 

 

内受容感覚は感情への入口

感情を感じるときは、身体にも変化が起きています。

「内受容感覚」に気づくようになると、自分の感情にも気づきやすくなります。

 

昔から、感情に気づきにくいひとは、自律神経機能の低下が知られていました。

感情の気づきと自律神経機能にも何らかの関係があるようですね。

身体的なコンディションを整えたり、身体の気づきを高めたりすることが、感情への気づきや心理療法への基盤になるというようにも解釈できる。

身体の気づきや内受容感覚が感情(情動)の気づきの基盤になる可能性を示しているる

(神原憲治 〈身〉の医療 vol.1,2015 ストレス反応と心身の気づき)

 

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事