【読書メモ】「量子力学で生命の謎を解く」

量子力学は、謎に包まれた学問です。

いや、専門家にとっては実験で明らかになる事実と数学的公式を組み合わせて表現できる現実感のある学問なのでしょう。

でも、一般人にとっては、粒子が同時に2か所に存在できるとか、確率的に存在するとか、遠く離れた粒子同士が影響し合うとか、ファンタジーや魔法の世界のように感じてしまいます。

「リンゴが落ちるのは地球の重力が働いているからだよ。」というニュートン力学なら、なるほどね〜、と納得できるのですけどね。

 

量子力学って、気になるんだけど、なんだかハードル高いんだよなぁと思っていた時に知ったのが、こちらの本。

量子力学で生命の謎を解く [ ジム・アル=カリーリ ]

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感想(1件)

生物の世界、生化学の世界は、薬剤師である私にとってなじみがあります。

この本では、生物界を説明するための道具として「量子力学」を使っているので、シンプルでわかりやすく感じました。

その読書メモです。

あくまでも私の理解ですので、詳細が知りたい方は本を読んでくださいね。

かなりざっくりと書いています。

 

1)量子の「不気味なふるまい」3つ

著者は、量子のふるまいを「見えない不気味な現実」と表現しています。

魔法の様な不気味な現実は、大きく分けると3つあります。

①量子もつれ(不気味なつながり)

②量子重ね合わせ(同時に二つのことをする)

③量子トンネル効果(壁をすり抜ける)

ひとつひとつ見ていきましょう。

 

①量子もつれ quantum entanglement

量子の不気味なふるまいといえば、まずは、これ。

粒子が不気味なつながりを持つことです。

英語のentanglementは「絡み合い」という意味があります。

 

こちらのページがわかりやすく書かれていました。

量子もつれとは、2つの粒子が強い相互関係にある状態であり、粒子のスピン、運動量などの状態をまるで「コインの裏表」のように共有する運命共同体のような状態を指す。

例えば、一方の粒子を観測したときのスピンが上向きであれば、もう一方は瞬時に下向きになる。このような量子もつれにある2粒子間の状態は、どれほどの距離──たとえ銀河の端から端という途方もない隔たりがあろうが、維持されるのだという。

 

遠く離れていても粒子どうしが影響し合うというファンタジーあふれる事実に、人間どうしもつながり合える(絡み合える)のではないかと夢をいだいてしまいますが、そういう証明はされていないそうです。

いったん一緒になった粒子どうしは、互いにどれだけ遠くに引き離されていても、魔法のように瞬時にコミュニケーションをとれるのだ。

~中略~

しかし、念のために言っておくが、量子もつれを引き合いに出してテレパシーの存在を証明することはできない。

『量子力学で生命の謎を解く』p15

まだまだニュータイプはガンダムだけのお話のようです。

 

 

②量子重ね合わせ quantum superposition

二つ目の魔法現象が、これ。

粒子が同時に二つのことをすることです。

 

こちらも英語の super「超」+ position「位置(立場,境遇,地位)」の方が、イメージしやすい。

ひとつのpositionを超えて、複数のpositionをとること。

粒子が同時に二通り、あるいは100通りや100万通りのふるまいをすることができる、「重ね合わせ」と呼ばれる現象だ。

『量子力学で生命の謎を解く』p11

 

代表的なのが、電子のふるまい。

原子の中の電子がどこにあるかは、測定しないと正確にわからないというだけでなく、電子そのものが我々には理解しようのない形で広がっていて、決まった位置をとってはいないのだと、ハイゼンベルクは論じた。

シュレディンガーは、観測していないときには電子は実在する物理的な波動であって、観測すると「収縮」して独立した粒子になるのだと考えようとした。

~中略~

シュレディンガー方程式の解は波動関数と呼ばれるものであって、それは特定の瞬間における電子の正確な位置を示しているのではなく、もし観測した場合にその電子がそれぞれの位置に見つかる確率を表した、一連の関数を与えるものである。

『量子力学で生命の謎を解く』p52

 

下図のように、電子は雲のように広がっていて、決まった位置をとっていないのだそうです。

色の濃さは、観測したときに見つかる確率の違い。

だから、電子は「確率的に存在する」と言われます。

 

wikipedia『原子』よりヘリウム原子のモデル図

 

量子の重ね合わせは、以下のページがわかりやすかったです。

最後の「多世界解釈」の話は衝撃的だったわ・・・・・。

 

 

③量子トンネル効果 quantum tunneling effect

そして、最もイメージが難しいのが、これ。

粒子が壁をすり抜けること。

量子トンネル効果とは、音が壁を通り抜けるのと同じように、乗り越えられそうにない障壁を粒子が簡単にすり抜けてしまうという奇妙な量子プロセスである。

~中略~

ここでいう「障壁」とは、十分なエネルギーがないと物理的に通過できない空間領域のことで、SFに登場するフォースフィールドだとでも考えておけばいい。

『量子力学で生命の謎を解く』p99

 

化学の世界では、化学反応をするときに基質と反応物の間には大きなエネルギーの障壁があります。

活性化エネルギー(Wikipwdia)より図を抜粋

 

この障壁を低くするのが「触媒」であり、生体内での「酵素」です。

 

化学反応は、温度が上がればエネルギーが高くなって山を越え、右側に進みます。

しかし、絶対零度-273℃近くの低温でも反応が進行することが発見されていました。

 

この不思議を説明するのが、量子トンネル効果です。

ホップフィールドは、低温では電子がエネルギーの斜面の途中に位置する状態に上がり、そこでは通過しなければならない距離が短いため、量子トンネル効果によって障壁をすり抜ける確率が大きくなると提唱した。

きわめて低温でも電子はトンネル効果によって移動するのだ。

『量子力学で生命の謎を解く』p102

※ちなみに、化学反応は電子の移動です。

 

量子トンネル効果については、こちらのページがわかりやすいです。

ぜひ、シュミレーションの「実行」ボタンを押してみてくださいね。

量子力学によれば、ボールが波のように振る舞うことで、壁のエネルギーに満たない場合でも壁の向こう側に「すり抜ける」ことができます。これは、まるでボールが壁に穴を開けて向こう側に行ったように見えることから、「トンネル効果」と呼ばれています。

量子力学とトンネル効果

 

2)量子の不気味なふるまいは生物界ではありえない

私は昔、電子が時空を超えて確率的に存在するのなら、人間が時空を超えてアカシックレコードやハイヤーセルフ、天使とつながっても不思議ではないと思っていました。

 

ところが、量子力学は物質界の法則であり、生物界では理論上、働かないというのです。

微小レベルで起きる不気味な量子現象は、我々が日々目の当たりにしたり使ったりする車やトースターのように大きい物体には、ふつうはなんの作用ももたらさないのだ。

~中略~

周りに見える生きていない物体の中では、ランダムな方向を向いてつねに動き回っている分子によって、量子の不気味さはすべて消し去られてしまっているのだ。

『量子力学で生命の謎を解く』p22

その理由は、大きく二つ。

わかりやすい方から説明していきましょう。

 

①大きな世界は無秩序から秩序への法則に従う。

たとえば、ゴム風船は温めると膨らみ、冷やすと縮みます。

ゴム風船の中では、大量の気体分子が無秩序に運動し、互いに衝突したり風船の壁にぶつかったりしています。

加熱すると気体分子たちはより速く飛び回り、お互いの衝突や風船の壁への激突の力が強くなり、この力で風船のゴムは膨らみます。

この現象は、目に見える秩序ある現象です。

 

このように、私たちが体験する大きな世界では、小さい粒子の無秩序な運動から秩序ある運動が生まれ、私たちは秩序ある物質の世界を経験しています。

小さい気体分子ひとつひとつの無秩序な動きがそのまま車やトースターを無秩序に動かすことはないのです。

 

この、物質界の秩序ある法則を明らかにしてきたのが、物理学、化学です。

ニュートン力学、熱力学など、知覚し体験できるのでイメージしやすい世界ですね。

 

ところが、分子や原子などの小さい世界の研究が進むにつれて、今までの法則が当てはまらない現象が見つかり、新しい秩序として考えだされたのが、「量子力学」です。

熱力学の法則など、正確で繰り返し検証可能な古典的物理学や化学の法則は、実際には原子や分子のランダムな運動が支配する統計的な法則であって、平均的にしか正しくなく、膨大な数の粒子が相互作用するからこそ信頼に足る。

~中略~

予測可能なのは大量の分子の平均的な振る舞いであって、一個一個の分子のふるまいではない。

熱力学の法則などの統計的な法則では、少数の粒子からなる系を正確に記述することはできない、そうシュレディンガーは指摘した。

『量子力学で生命の謎を解く』p60

 

②大きな世界では「測定」が起きる

もうひとつ、大きな世界で量子の不気味なふるまいが消えてしまうのは、「測定」が起きるからです。

 

なに?

それ?

 

もともと、量子力学の不気味なふるまいは、人間が測定機器を設置して「測定」をすると消えてしまうことが知られていました。

有名な二重スリット実験です。ご存じない方は、こちらがわかりやすいです。

「世界一ふしぎな実験」を腹落ちさせる2つの方法

 

この「測定」を「人間の意識の関与」と考えると、スピリチュアル方面に行ってしまいますが、この本ではそちらへは行きません。

ここでは、「測定」をこう定義しています。

もつれあった粒子のペアの一方に水分子がぶつかったときに何が起きるかだ。

水分子のその後の運動はぶつかった粒子の状態に影響を受けるので、その水分子ののちの運動を調べれば、ぶつかった粒子の性質の一部を導くことができるだろう。

その水分子の運動は、誰かが調べるとかどうかとは関係なしに、もつれあったペアの状態を記録していることになるため、その意味でこの水分子は「測定」を行ったといえる。

『量子力学で生命の謎を解く』p24

 

簡単に解釈すると、「分子どうしがぶつかること」

 

 

え??

それが「測定」になっちゃうの?

 

そうなんですって。

そういうことにしておきましょう。

 

だから、量子の不気味なふるまいを保つためには、ぶつからないようにすること。

そのためには、粒子の数を減らし、冷却して粒子の運動を減らさなければなりません。

量子系はふつうはごく短時間で壊れてしまい、それを防ぐには、周囲から隔離したり(衝突する粒子を減らす)、極低温に冷やしたりする(衝突の回数を減らす)しかないと考えられる。

一個の原子の干渉パターンを浮かび上がらせるには、装置からポンプで空気をすべて排気し、絶対零度のごく近くまで冷却しなければならない。

~中略~

絶対零度-237℃近くにまで冷却してはじめて、分子のランダムな運動が完全に静止して量子力学が姿を現すのだ。

『量子力学で生命の謎を解く』p66

 

分子が衝突する「測定」で、量子の不気味なふるまいが消えるなら、大量の生体分子が動き回る生物の細胞内で量子の不気味なふるまいが持続するわけがない、というのが、量子力学の理論です。

 

なあ~んだ。

不気味な量子の世界は私の体験世界とは別世界の出来事なのね。

魔法が使える異世界は、やっぱりラノベだけのものなのね。

 

ところが、この量子現象が光合成、ミトコンドリアの呼吸、酵素の働きなど、多くの生命現象で見つかっています。

この謎に迫るのが、「量子生物学」。

 

不気味な量子的性質を維持する特殊な存在が生命であると主張する科学者の数も、少ないながら徐々に増えている。

~中略~

温かく湿っていて取り散らかった生物の体内でどのようにして量子の不気味さが存在し続けているかという謎が、最近解明されようとしている。

『量子力学で生命の謎を解く』p25

 

詳細な謎の解明については、本を読んでね。

生命は、「量子の不気味なふるまいを地球環境で実現する存在」なのかもしれません。

 

 

【番外編】代替療法レメディの転写と希釈と振盪について

さて、ここから先は森と魂のセラピストの妄想の世界です。

この本を読み終えての個人的な感想で、本の内容からは離れますので、ご容赦ください。

 

①水の転写と「測定」

バッチフラワー、ホメオパシー、アントロポゾフィー医学では、レメディには植物など原物質のエネルギーが水に転写されていると考えます。

バッチフラワーレメディの核となるのは、植物の持つ癒しのエネルギーを転写した母液です。

バッチフラワーレメディ母液の作り方

 

もし、分子どうしがぶつかることで「測定」され、情報が記録されるのだとしたら、原物質のもつエネルギーが水に転写され、その情報が私たちに影響を及ぼすことがあるのかもしれない。

 

 

ハイ、これは私の妄想です。

なんの根拠もありません。

 

②レメディの希釈と量子のふるまい

ホメオパシー、アントロポゾフィー医学のレメディは、計算上一分子もないほどに希釈します。

しかも、希釈すればするほどシャープな効き目になるのだとか。

超希釈された液の浸み込んだショ糖の粒を用いるので、一分子も含まれてないのでは、ただの水ではないか、それがどうして効くのかと、誰でも疑問に思います。

これには連続的に薄める毎にバイブレーション(振とう)がおこなわれ、エネルギー的な変化として考えられています。

超希釈によって薬剤の化学的物質性ではなく、薬剤の情報あるいはその物理的エネルギーが残り、それが身体のエネルギーと共鳴し反応がおこる。

ホメオパシーとは

製剤は物質がなくても働き作用するものであるという考え方が基本にあり、媒質自体が薬剤を支えているので希釈とリズミカルに動かす振盪が非常に重要である。

備え持っていた固有の作用が解かれ、成分は媒質に伝わり、または刻印される。

『アントロポゾフィー医学入門』より

 

これはもしや、希釈することで分子の衝突が少なくなり、量子の不気味なふるまいが保たれる可能性があるのでは?

 

 

ハイ、これも私の妄想です。

読み飛ばしてください。

 

③振盪と酵素の振動

ホメオパシーもアントロポゾフィー医学もレメディを作るときには規則的な振盪をします。

実は、生物の中では酵素なども振動していることが知られています。

酵素はじっとしてはおらず、反応中つねに振動していることがしばらく前から知られている。

量子生物学者は、この振動はいわば「駆動運動」であり、その主な働きは、原子や分子どうしを十分に接近させてそこに含まれる粒子(電子や陽子)に量子トンネル効果を起こさせることだと主張している。

『量子力学で生命の謎を解く』p108

 

さらに、アントロポゾフィー医学では振盪時に「人間」の愛を捧げるそうです。

人間が行うリズム振盪・希釈の最も大切な点は、健康と十分な睡眠、この行為に愛や喜びを持ち、自身を献身的に捧げられることである。

薬剤師、これの行為者はポテンタイズにおいて個人の問題や疑問、または心配事に関わるような状態にはなく、生成する薬剤を支え、完全にリズム振盪・希釈のプロセスへ向けられていることが必要である。

『アントロポゾフィー医学入門』より

 

振盪をすることで、レメディを希釈するときに量子トンネル効果を起こしているのでは?

 

 

ハイ、これも私の妄想でした。

 

 

最後に、著者のジム・アル-カリーリ氏のTED映像がありましたので、添付します。

15分でざっくりと言いたいことを述べています。

 

プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事

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