プロセスワークは「私を超えた何か」からのメッセージに気づく技芸

プロセスワークとは

プロセスワークは、アメリカのユング派心理学者だったアーノルド・ミンデルが創始し発展させたもので、プロセス指向心理学とも呼ばれます。

私は2015年にプロセスワークに出会い、それまで学んできた魂&心の世界と理論が結びつき、具体的な方法として体系立てられていることに感動しました。

以来、学びを続けています。

 

しかし、「プロセスワークって何ですか?」と質問されたとき、簡単に言い表せないもどかしさも感じていました。

日本プロセスワークセンターのHPには、以下のように書かれています。

プロセスワークは、私たちがより広範で多様な体験を得て、よりいのちの全体性を生きることをサポートする知恵と技芸を宿しています。

~中略~

いのちの全体性を生き始めるとき、これまで「私」でなかったもの、すなわち「他者」と出会い、私と他者が混じり合い、対話の端緒がひらかれていきます。

日本プロセスワークセンターHPより抜粋

とてもステキな文章なので、興味のある方は一度読んでみてください。

ただ、「より広範で多様な体験」「いのちの全体性」などの言葉は初めての方にはピンとこないかもしれませんね。

 

今日は、日本トランスパーソナル学会会長の諸富祥彦著『トランスパーソナル心理学入門』からの抜粋も併せて紹介していきます。

 

こちらでも紹介した本です。↓

 

人生には「私たちを超えた何かの力」が働いている

私たちの人生で働いている、私たちを超えた何かの力

私たちを超えた向こうからの呼び声。

それは、実にさまざまな形をとって、私たちの人生に姿を現します。

『トランスパーソナル心理学入門』(講談社)より

 

この「私たちを超えた何かの力」は、私が「大いなるもの」と呼んでいるものに近いと思います。

魂&心の世界にはいろんな流派がありますが、『世界は人智を超えた何かで動いている。』という考え方は、ほぼほぼ共通しています。

 

その力は、いつも心地よい体験をもたらすとは限りません。

どんなに品行方正に生きていても、望まない現実に出会ってしまうことはあるものです。

それはたとえば、妙に気になる昨夜の“夢”として現れるかもしれません。

妻(夫)や子ども、職場の同僚などとの“人間関係のトラブル”として現れるかもしれません。

偏頭痛とか肩のこり、胃の痛みといった“慢性の身体症状”として現れる場合もありますし、

酒、タバコ、コーヒーといった“やめられないもの”として出てくることもあります。

『トランスパーソナル心理学入門』(講談社)より

 

日本プロセスワークセンターは以下のように表現しています。

そうした体験・出来事は、あなたを圧倒し、人生を邪魔されたような気分にさせることが少なくありません。

この痛みや苦しみをどうにかしたいと、苦悩し葛藤する。ネガティブな(後ろ向きな)体験として、遠ざけたり、否定・否認したくなるのも、ある意味、無理もないことです。

日本プロセスワークセンターHPより抜粋

 

これらの苦悩・葛藤する体験を起こすものを「シャドー」と呼んだのが、ユングです。

ユングは、「私」のアイデンティティから切り離された自分自身の心の諸部分を「影」と呼びました。

ユングによると、「私」のアイデンティティにおさまりの悪い心の動きは否定され、切り離され、表に出ないように隠されていきます。

しかし、「私」に切り離された心の諸部分はどこにも消え去ることなく、無意識の中で注目される機会をうかがっていて、いわば背後から「私」を追い回す「影」になるというのです。

『インテグラル理論入門Ⅱーウィルバーの世界論(春秋社)』より

 

 

ユングは、人生は「シャドー」と向き合い心の全体性に向けて歩んでいく過程であると述べました。

ユングは、「影」と真摯に向き合うことを勧めています。

ユングに言わせると、人生の道のりは「私」と「影」との葛藤に苦悩しつつ、心の全体性の自覚に向けて歩んでいく「個性化の過程」なのです。

『インテグラル理論入門Ⅱーウィルバーの世界論(春秋社)』より

 

日本プロセスワークセンターでは、苦悩・葛藤する体験について、「まだ生きられていない人生」(≒「シャドー」)を見つける入り口だと述べています。

しかしそこにこそ、プロセスワークは、全体性を生きる入り口を見出します。

目の前にあるのは「まだ生きられていない人生」です。

プロセスワークは、私たちがより広範で多様な体験を得て、よりいのちの全体性を生きることをサポートする知恵と技芸を宿しています。

日本プロセスワークセンターHPより抜粋

 

ケン・ウィルバーも、「シャドー」に言及しています。

私たちが日常生活の中で拒絶・隠ぺいしている視たくない性格や感情などで、無意識化され病理的な症状を起こすことがあり、

こうした無意識の領域を積極的に探求してそこに隠ぺいされているものを健全な形で解放・統合することは、私たちが真に包括的な治癒と成熟を実現していくためには必須の活動である。

『インテグラル理論入門Ⅰウィルバーの意識論(春秋社)』より

 

と、ここまでを私なりにざっくりまとめると、プロセスワークとは、「シャドー」を健全な形で解放・統合する方法ひとつということになります。

このあたりざっくり行きますので、細かいつっこみは受けつけません。

 

 

「私たちを超えた何か」からのメッセージに気づいて調和する

「私たちを超えた何かの力」は、夢、身体症状、人間関係トラブルなどのさまざまな形で私たちを呼んでいます。

それは、魂からの呼び声であり、人間が小さな頭で考えても理解できないものだったりします。

 

今が幸せ。

だから、ずっとこのままがいい。

 

と、思っていても、魂が私を呼んでいるのだから、どうしようもないのです。

 

西の魔女のおばあちゃんも、こう言っているのだから、あきらめましょう。↓

魂は成長したがっているのです。

それが魂の本質だから仕方がないのです。

より

 

でも、うれしいお知らせもあります。

それは、ヒトは「大いなるもの」に振り回されるだけの無力な存在ではない。』ということです。

 

諸富先生もこう述べています。↓

この人生で私たち自身を超えて働いている何かに信頼を寄せ、それと自覚的に調和しながら生きていく時、その何かがますます力を発揮し、人生がより意味に満ち充実したものとなることはたしかなようです。

『トランスパーソナル心理学入門』(講談社)より

 

ふむふむ。

「私たちを超えた何かの力」≒「大いなるもの」を信頼し、自覚的に調和しながら生きることで、どうやらいい感じになるようですね。

それはきっと、自分の「幸せになる力」とつながること。

 

諸富先生は、「私たちを超えた何かの力」からのメッセージに気づく方法として、プロセス指向心理学を紹介しています。↓

では、どのようにすればその”メッセージ”に気づき、それを自覚的に生きていくことができるでしょうか。

そのための方法として、私の知るかぎり最も優れた方法が、アーノルド・ミンデルの創始した”プロセス指向心理学”。

というのも、これまでの心理療法の学派が、さまざまな現象のいずれか一つか二つだけを専門的に扱ってきたのに対して、プロセス指向心理学は、私たちが人生で必要な気づきを得るための、ありとあらゆる手がかりに開かれているからです。

『トランスパーソナル心理学入門』(講談社)より

 

「私たちを超えた何かの力」からのメッセージの手がかりとしてわかりやすいものが、夢、身体症状、人間関係のトラブルなどの体験です。

ということで、私なりにまとめるとするなら、以下のようになります。

プロセスワークは夢、身体症状、人間関係などからのメッセージに気づき、調和する方法

 

詳しく学びたい方は、こちらをご覧くださいね。


 

私の夢のワーク体験

以上、プロセスワークについて紹介してきましたが、理屈だけではピンと来ない方もいると思いますので、私の体験を二つ紹介しましょう。

基本的な流れは、「私たちを超えた何かの力」が起こしていると思われる体験をやりきり、やりきった感覚からメッセージをもらいます。

メッセージ①「だから、なに?」

ワークした夢は、誰かに追いかけられて、逃げる夢。

足が動かず、腕だけで頑張って逃げる私。

夢だとわかっていて、飛べばいいじゃん とも思うのに、それもできません。

 

ワークでは夢の中を再現して、実際に歩きながら、腕だけで頑張っているイメージに集中します。

いつまで経っても苦しくて、しんどくて、しんどくて、自分の無力感に押しつぶされて、情けなくて涙が出てきました。

 

ところが、ひと通り押しつぶされた感覚を感じ続けると、だんだん歩いている自分の足を感じ始めます。

逃げていたはずなのに、ゆっくり歩いていて大丈夫な感じ。

いつの間にか、私は自分の足でしっかり歩き、追いかけていた誰かはどこかに行ってしまいました。

 

さて、ここで「しっかり歩いている私」から今の私へのメッセージをもらいます。

今の私が気になることは、

「私は、他人の変容には絶対にサポートできない。」とか、「人類自体、他人の変容に他人が関わることは絶対にできないでしょ。」という感覚。

 

そんな私への「しっかり歩いている私」からのメッセージは、

「だから、なに?」

 

え?

あ、でも、そうよね~。

だから何だっていうのかしらね。

関係ないわよね。どうもすんませんでした。

 

というその日のメッセージでした。

 

メッセージ②「私には、力がある。」

プロセスワークでは、睡眠中の夢以外にも「夢のような出来事」も扱います。

その日は、週末のドライブ体験をワークしました。

 

その週末、山梨県のくねくね国道20号を、運転がヘタクソな私は超スローに走っていました。

すると、後ろからやってきた車がピタッと後ろに張り付きました。

バックミラーに移るライトからは、「速く走れ、ゴラァ!!」という怒りを感じました。

 

「ひえ~~~っっっ」と、走っていたら、ついに隣の配偶者にも「早く道を譲りなよ!!」と怒られ、もう、パニックになってしまいました。

 

この出来事について、プロセスワーク的に整理すると、

恐怖におののいている私はいつもの『「私」のアイデンディティ』であり、

後ろから迫る来る車のライトは、『まだ生きられていない人生』となります。

 

プロセスワークでは、『まだ生きられていない人生』を、身体で体験していきます。

 

迫りくるライトになりきってワークをしていると、ねっとりとした暗闇をもがきながら押している自分を感じました。

そんなイメージで、セラピストさんが持つ座布団をぐぐっと押していたら、涙があふれてきました。

 

『私には、力がある』

 

そんな気持ちが湧きあがってきました。

 

今まで繋がっていなかった”力”に、繋がることができた感覚。

その感覚とともに、あふれてくる涙。

 

まだ生きられていない、私の人生とつながることができたときの涙でした。

 

さいごに

最後に、諸富先生のまとめをどうぞ。

要するに、プロセス指向心理学とは、入手可能なあらゆる手がかりを活かして、可能な限りの”気づき(アウェアネス)”を獲得し、人生のプロセスを自覚的に生き抜いていくための総合的なアート(技芸)。

その目指すところはこの”宇宙プロセスそのものに従う”こと。

何か特別な宇宙意識の獲得を目指すわけではなく、ただ自分の内外で起きているプロセスに徹すること。

気づきを伴い、今、この瞬間瞬間を完全に生きること。

ミンデルが目指すのは、ただそれだけです。

『トランスパーソナル心理学入門』(講談社)より

 

何か特別な宇宙意識を目指すのではないんですね。

ただ自分の内外に起きているプロセスに気づき、瞬間を完全に生きる。

 

ただそれだけって・・・、それがとっても難しいのが、人間なんですけどね。

ふぅ。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事