森林療法のエビデンス「視覚刺激」

今回は、五感の中でも特に影響が大きいとされる視覚刺激に関する研究を紹介します。

紹介する研究は、いずれも「森林医学 朝倉出版2006」に紹介されています。

 

☆注意事項☆

森林療法のエビデンス各ページでの研究紹介は、タイトルも含めて省略する過程で発表者の主観が入っています。引用する場合は必ず原著をお読みください。

 

大型ディスプレイによる視覚刺激の検討

〔対象〕男子大学生14名

〔方法〕室内で70インチの高解像度ディスプレイ画像を見せて、脳前頭前野の活動、血圧、脈拍数を測定。室内は映画館程度の照度で臨場感を持たせ、画像は「パリの森林浴風景」と「満開の桜」の風景を用いた。

〔結果〕「パリの森林浴風景」は主観的には快適で鎮静的であると評価。収縮期血圧、拡張期血圧とも有意に低下。脳活動も鎮静的な変化し、リラックス状態となった。「満開の桜」においては主観的には快適で覚醒的であると評価され、脈拍数が有意に増加、脳活動も90秒間連続的に昂進した。

〔考察〕「満開の桜」の脳活動昂進状態はこの場合はわくわくした状態を反映していると考える。

(須田ほか.日本生理人類学会大会要旨集,45:84-85,2001)

 

ヒノキ材と白壁による視覚刺激の検討

〔対象〕男子大学生14名

〔方法〕節の多いヒノキ材と白壁を壁一面に提示し、自律神経反射と主観評価を調査した。

〔結果〕主観的にはヒノキ材の壁で抑うつ、疲労が減少、活気が増加。白壁では抑うつ、怒りが増加、活気が減少した。平均血圧はヒノキ材、白壁とも変化は認められなかったが、主観的に「好き」群と「嫌い」群に分けて評価したところ、ヒノキ材、白壁とも「好き」群においては有意に血圧が低下した。「嫌い」群においてはヒノキ材では変化がなく、白壁では血圧が上昇した。

 (Sakuragawa S et al. J Wood Science,51(2):136-140,2005)

【筆者補足】

室内であっても、森林風景や自然素材の視覚刺激により血圧や脈拍が低下し、リラックス状態になるのは興味深いですね。

また、「好き」群と「嫌い」群に分けた評価からは、「自分がどう感じるかが大切」というセルフケアの基本が読み取れます。

 

さらに、自然素材の刺激は「嫌い」であっても緊張状態には導かないということも興味深いです。私たちが本能的に自然を求めているということなのかもしれません。

 

これらの室内実験の様子は「森林浴はなぜ体にいいか 宮崎良文著 文春書店2003」にも詳しく書かれています。

もうひとつ、実際の病院で実施された研究を紹介します。

病室の窓からの眺めが与える影響を検討

〔対象〕1972年から1981年にかけてペンシルベニア病院で胆のう摘出手術を受けた患者46名

〔方法〕窓から木が見える群23名、壁しか見えない群23名に分けて術後の入院日数、看護師による患者の記録、鎮痛剤の服用量などを比較した。

〔結果〕退院までの日数は、窓から木が見える群が7.96日、壁しか見えない群8.70日と有意に短かった。看護師による患者のネガティブな記録も有意に少なく、鎮痛剤の服用回数も少なかった。

(Ulrich RS.Science,224(4647):420-421,1984)

【筆者補足】

その他にも学生寮や刑務所など建物からの眺望が健康に影響を及ぼすという報告がいくつか「森林医学」に紹介されています。

普段何気なく見ている景色は、思いのほか私たちの身体に影響を及ぼしているようですね。

 

 

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師・森林インストラクター・メディカルハーブプラクティショナー・ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー・日本森林療法協会元理事