森林療法のエビデンス「触覚刺激」

☆注意事項☆

森林療法のエビデンス各ページでの研究紹介は、タイトルも含めて省略する過程で必ず著者の主観が入ります。

引用する場合は必ず原著をお読みください。

研究紹介

今回は触覚刺激が身体に及ぼす影響の研究を紹介します。

森林セルフケアでは、樹木の幹肌やコケ、キノコなどに触わり感触を楽しんでもらうことがあります。触れることは、「考える」から「感じる」への入り口になるように思っていますが、さて、実際には身体にはどんな変化が起きているのでしょうか。

 

※キノコ類は、見た目で触り心地を予測してから触ってみるのもオススメ。

 

接触刺激の脳活動への影響の検討

〔対象〕男子大学生10名

〔方法〕閉眼状態で木材、綿、タワシなど15種類を手のひらで30秒間接触し、その後30秒間は指先で材料を撫でる動作をさせた。α波が脳活動時に減衰することを利用して脳活動を測定した。

〔結果〕単に触れるという受動的な接触の場合、木材は他の材料に比べて脳活動は小さかった。積極的に撫でた場合は、木材の挽材面(ノコギリ面)で特に強い脳活動が観察された。

〔考察〕単に触れた場合には人に対する刺激が少なく優しい材料であるが、能動的に撫でた場合には強い脳活動が観察され、面白みのある素材であると感じられていることが示唆された。

『森林浴はなぜ体にいいか』宮崎良文,123-124,2003)

【筆者補足】「森林浴はなぜ体にいいか」には、この他にも足にフローリングや畳を接触させる研究なども紹介されています。

受動的な接触、指で撫でる接触、また素材が何であるか分かっているかどうかによって脳活動は変化するそうです。

 

接触刺激による主観評価と収縮期血圧への影響の検討

〔対象〕男子大学生13名

〔方法〕ナラ、冷やしたナラ、ヒノキ、スギ、金属、温めた金属、アクリル、冷やしたアクリル、塗装したナラ材を用いて、触れているものが見えないように手で接触させた。

〔結果〕主観評価では木材と温めた金属が「快適」、金属、冷やしたアクリル、冷やしたナラ材は「不快」と評価された。拡張期血圧は金属、アクリル、冷やしたアクリルで有意の上昇を認めたが、温めた金属では上昇が抑制された。

木材では接触直後には一過性の血圧の上昇を認めたが、15秒後には接触前の値に戻りその後上昇することはなかった。冷やしたナラ材では、主観評価は不快であると評価されたが拡張期血圧は上昇しないことが確認された。

(宮崎良文ほか 日本木材学会大会研究発表要旨集,48:2161998)

【筆者補足】宮崎先生はこの研究の前に通常温度での木材と金属の接触刺激を研究し、金属接触時には拡張期血圧と瞳孔径が上昇してストレス状態になり、木材接触時には軽微な上昇後にすぐに接触前の値に戻る結果を得ていました。

しかし学会で「木材は元々温かく、金属は冷たいので当たり前である」との指摘を受け、温度条件を変化させて上記の研究を行ったそうです。

冷やしたナラ材が不快であっても拡張期血圧が上がらなかったことについて宮崎先生は「人の生理機能は先天的に自然対応にできていることを示す傍証の一つである」とコメントされています。

 

おわりに

森林には「快適でリラックスする」副交感神経を活性化する要素と、「対象に興味をもって体が活動的になる」交感神経を活性化する要素と、両方あるように思います。

森であれこれ触っていると、交感神経と副交感神経がしなやかに連動し始めるかもしれません。

但しかぶれたり、トゲがある場合があるので、気をつけましょう~。

 

 

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事