「客観的思考」で思考を肉体から独立させる~シュタイナー『いかにして超感覚的世界を認識するか』読書会終了
ルドルフ・シュタイナー『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』の読書会、先日あとがきを読んで、すべてのスケジュールを終了しました。
いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫)
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最後のあとがきで強調されていたのは、
「思考を肉体から独立させること。」
『肉体から離れた事柄を認識するためには、まず純粋に魂だけで認識行為がなされねばならない。』(上記の本より)
超感覚的世界は、肉体から離れた事柄ですもんね。
その認識のためには、思考を独立させる必要があるんだそうです。
知覚や感情は、肉体の活動
まず、「知覚」は肉体の活動です。
目、耳、鼻、舌、皮膚という感覚器官が外界の刺激を感じ取って、知覚神経を介して脳に刺激に伝えます。
五感の感覚なので、私たちにもなじみがありますね。
次に、「感情」も肉体の活動です。
これは、少しイメージしにくいかもしれません。
喜怒哀楽などの感情を感じるとき、私たちはドキドキしたり、ほてったり、キュッとしたり、身体の変化を感じます。
このとき身体でも実際に、神経伝達物質やホルモンのバランス、血圧、呼吸数の変化、筋肉緊張、瞳孔拡大などが起きています。
私が学んだプロセスワークでも、感情は身体を通して表出される(身体チャンネル)としていました。
知覚と感情は肉体活動だけれども、「思考は肉体から切り離すことができる」というのがシュタイナーの言い分です。
人間は、思考を肉体から切り離すことができる。
『どんな人にも、内面生活における思考部分を、それ以外のすべての部分から切り離して経験しうるまでに魂の自己集中を行うことは可能である。』(上記の本より)
私たちは、知覚や感情を意識して、そこからの思考を作ることができます。
たとえば、美しい景色を見て(知覚)、心地よさを感じて(感情)、
「またここに来るために明日から頑張ろう。」、
「次回はあの人と一緒に来て、見せてあげよう。」、
「この景色を後世に残さなければならない。」
など、様々な思考を作ることができます。
あるいは、凄惨な事件の話を聞いて(知覚)、悲しさと怒りを感じて(感情)、
「こんな事件はなぜ起きてしまったのか。」、
「二度と起こさないためにはどうしたら良いのか。」
などの思考を作ることもできます。
でも、これらの思考を肉体から切り離すって、どういうことでしょうか???
読書会でも参加者の方と一緒に悩みましたが、「客観的な思考」と考えてみるのはいかがでしょう?
客観的とは(⇒goo辞書「客観的」)
1 主観または主体を離れて独立に存在するさま。⇔主観的。
2 特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。「客観的な意見」「客観的に描写する」⇔主観的。
つまり「客観的思考」とは、特定の立場にとらわれず、あらゆる立場から思考することと考えられます。
たとえば、よくある小話ですが、コップに水が半分入っている場合を考えてみましょう。
①コップに水が半分入っていることを視る(知覚)
↓
②いっぱい飲みたかったから、半分しか入っていないことに悲しさ、怒りを感じる(感情)
ちなみに、感情は肉体活動なので制御できません。
ここで「半分入っていることに感謝して嬉しく感じましょう~。」というのは、ムリヤリポジティブで、なんだか苦しい感じがします。悲しいものは悲しい、怒ってるなら怒っているとして、その存在を認めるのも大切です。
↓
③そこから思考を作り出す。
・こんな少量飲んでも意味がない。
・私は大切にされていないんだ。
・水はいっぱいに入れるのが普通だ。
などなど。
これらの思考には、「いっぱい水が飲みたかったのにぃ~!」という肉体の恨み節が入っているような気がするのは、私だけでしょうか。
ではここで、「客観的思考」で幅広い視点から思考してみましょう。
・本当はいっぱい飲みたいけど、半分あってよかった。
・足りないから二杯目をお願いしよう。
・水を用意する人も忙しかったんだろう。
・たまたま水が切れていたのかな?
いかがでしょうか。
なんとなく、「いっぱい水が飲みたかったのにぃ~。」という肉体の恨み節から離れていく感じがしませんか?
『思考が知覚、感情などに働きかけるとき、その働きかけの度合いに応じて、人間の中に人間を通して肉体との関わりを持たぬ何かが生じる。』(上記の本より)
「客観的思考」により、特定の立場にとらわれず思考することで、相手の立場になって考えることができ、思い込みや決めつけも少なくなります。
これは、思考が肉体から独立しているとき、可能になります。
これらを扱うのが認知心理学です。
「客観的思考」は、自己啓発分野でも大切にされています。
思考の光が超感覚的認識の洞察を与える。
シュタイナーは、超感覚的認識と錯覚、幻覚、白昼夢や霊媒体験を混同しないように、一貫して警告しています。
あとがきでは「幻覚体験や霊媒現象は肉体への依存度が高い。」と言っており、ここまでして思考と肉体との独立を説くのは、そのためと思います。
アントロポゾフィー勉強会でお世話になった山本忍先生も、シュタイナーは「思考」を大切にしているとおっしゃっていました。
ともすると、癒しの世界では悪役になりやすい「思考」。
ですが、意識の力で練習することができるのも「思考」。
『思考との結びつきの意味を理解することによって得られる光は、超感覚的認識の本質への正しい洞察をも与えてくれる。』(上記の本より)
「客観的思考」を練習することが、思考を肉体から独立させ、それが超感覚的認識へとつながっていくのかなぁと思っています。
次は、2018年9月20日から『神秘学概論』の読書会を企画しています。
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プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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