森林療法のエビデンス「Ⅱ型糖尿病」

厚生労働省の「2012年国民健康・栄養調査結果」の推計では、糖尿病が強く疑われる成人男女が950万人に上ることが明らかになりました。糖尿病にはインスリン依存の1型糖尿病とインスリン非依存性の2型糖尿病があり、生活習慣病として食事療法や運動療法の対象となるのは2型糖尿病です。

今回紹介する研究を行った北海道大学保健管理センター診療所の大塚吉則先生は温泉地療法の専門家であり、糖尿病における温泉、運動療法の適応として「肥満を伴う2型糖尿病患者で重症の合併症を有しないものが良い適応となり、1型糖尿病であっても血糖値が安定した状態であれば低血糖症に注意しながら施行できる。」と述べています。

☆注意事項☆

森林療法のエビデンス各ページでの研究紹介は、タイトルも含めて省略する過程で要約者の主観が入ります。引用する場合は必ず原著をお読みください。

 

森林浴が糖尿病患者の血糖値を低下

〔対象〕インスリン非依存性2型糖尿病患者:男性29名、女性58名(平均61歳)

〔方法〕6年間に森林浴を9回実施した。体力と合併症の状況により3kmあるいは6kmの森林を歩き、前後で血糖値を測定した。

〔結果〕血糖値は森林浴の後では平均179mg/dlから108mg/dlに減少した。3km30分歩行時には前後で平均74mg/dl、6km60分歩行時には前後で平均70mg/dlの変化があったが、距離による違いは有意差がなかった。HbA1cは6.9%から6.0%に減少した。

〔考察〕森林環境は、ホルモン分泌と自律神経系の変化を引き起こし、森林環境を歩くことで血糖値の低下に有益な影響を及ぼしたと推定される。

(International Journal of Biometeorology 41(3):125-127,1998)

 

また、大塚先生は森林歩行以外の運動時の血糖値変化との比較検討をしていますので、以下、紹介します

森林歩行以外の運動時の血糖値の低下

  • プールにおける30分間の水中運動⇒約49mg/dl
  • 2.5度傾斜角トレッドミル歩行2.4km22.5分⇒約24mg/dl
  • クロスカントリーレース10km⇒37.8mg/dl
  • 森林内歩行3km⇒74mg/dl

これらのことから、糖尿病患者の運動療法として森林内歩行が有効であり、しかも3km程度の歩行で十分であるこどわかる。患者は楽しく歩くことでこれだけ血糖値低下作用があることに気づき、このことは運動療法の良い定義づけになる。

糖尿病患者の血糖値低下作用が森林内歩行において著名に認められるということは、森林内に多量に存在する芳香性物質(フィトンッド)やマイナスイオンが何らかの機序で血糖降下作用を高めていると考えられる。

(NPO法人健康と温泉フォーラムHPより)

【筆者補足】

血糖値は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスにより上昇がみられますが、ストレスも大きく影響しています。ストレスがかかるとコルチゾールというホルモンが副腎皮質から分泌され、血糖値を上昇させます。これは、細胞内でのエネルギー産生を高め、外部環境に対応させるためですが、その状況が長く続くと血糖値が高い状態が続き、インスリンの働きが鈍くなり、2型糖尿病を発症します。

森林は、芳香性物質やマイナスイオンなどの要素も持っていますが、何より五感を刺激し、快適な環境であることがストレスを軽減しすることが血糖値への影響につながっているのではないでしょうか。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事