森林セルフケアサポーターの資質~ホリスティックな視点から

2006年、『アロマトピア』に「森林療法に関わるマンパワー」という記事を書きました。

当時は森林インストラクターの立場から①安全管理・引率能力、②自然の知識、③自然の客観視の3点を得意分野、①語りすぎる、②元気があふれすぎる、③シェアリングを求める3傾向を課題として挙げ、森林インストラクターにはカウンセリングマインドが必要と考察しました。

あれから12年、紆余曲折を経て今私は大学の通信課程で心理学を学び、今、森林セルフケアサポーターの資質としてホリスティックな視点から「深く自分自身でいること」と「人間として参加者に関わること」を感じています。

森林セルフケアサポーターとは、NPO法人日本森林療法協会が認定する資格です。

まずホリスティックとは、全体性を意味するホロスを語源とし、人間はボディ(物質+生命)、マインド(感情+思考)、スピリットの総体であり、すべての環境と繋がっていると考えます。

植物は物質と生命から成り、さらに感情を持つと動物となります。「植物にも感情があるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、複雑な思考と感情を持たないからこそ、シンプルでより完成された存在であるといえます。

 

 

 

この宇宙はビッグバンを経てさらなる秩序、複雑性、つながりへの形成的傾向をもって進化し現在に至ります。人間にもこの傾向は存在し、私たちは自分自身を受容するとき、自己変容していく力を潜在的に持っています。

カウンセリングの神様とも呼ばれるカール・ロジャースは、カウンセラーの態度条件として①自己一致、②無条件の肯定的配慮、③共感的理解を提唱しました。植物は常に自己一致し、無条件に私たちを受容します。森林がセラピストである所以であり、自己一致し「深く自分自身でいること」は森林セルフケアサポーターにも大切な資質です。

しかし、私たち人間は思考と感情を持ち、植物のように相手を受容することはできません。思考は常に良し悪しを判断し、感情は私たちを揺さぶります。

前述の③共感的理解とは、相手の内面世界をあたかも相手になったように感じつつも、反応する自己を自覚し、表現することです。私たちは植物ではなく人間です。他者との関係の中で人間は自分自身として本来の実現傾向へと導かれていきます。これを「人間として参加者に関わること」という資質と考えています。

森林セルフケアとは、自分自身をケアすることであり、森林を守ることではありません。人間としての自己を愛し、深く自分自身でいることは、実はかなり難しいことです。自分の弱点を未解決にしていると、思考や感情に覆われて純粋な自己を自覚することができなくなります。

森林セルフケアサポーターには、自分の思考と感情を宇宙の形成的傾向にゆだねて進化させていこうという意図が求められるのかもしれません。

最後に三番目の資質として「森の癒しの限界を知っていること」を挙げておきます。私たちは他者との相互交流を通して、鏡のように自分自身を自覚する存在です。森林での無条件の受容体験は自己を支える基礎となりますが、人間はさらなる複雑性への実現傾向を持っています。そんな人間を愛しく感じることもまた資質のひとつと言えるでしょう。

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事