世界史から東西ハーブ医学を眺めてみたら・・・。

NPO法人日本メディカルハーブ協会では、今年から日本のハーブセラピスト養成コースが始まり、私も講師をしています。

 

ところで、日本のハーブって、何を指すと思いますか?

 

私は、ドクダミやヨモギのように身近に植わっている植物だと思っていました。

ところが、ハトムギやユズのように、身近に自生していなくても、私たちの生活にしっかり入っている植物があります。

原産がエジプトや東南アジアだったとしても、いつの頃からか私たちの生活と切っても切れなくなっている植物たち。

そんな植物も日本のハーブとして学ぶのが、このコースです。

 

そのためには、まず歴史を学びます。

ユーラシア大陸に存在した、いくつかの文化圏。

ときに対立し、混じり合いながら、時代は流れていきました。

 

 

古代ギリシャ vs 古代中国の春秋戦国時代(BC500~BC300頃)

医学の父と言われるヒポクラテスは、 紀元前460年ごろ~ 紀元前370年ごろの古代ギリシャの医師です。⇒wikipedia『ヒポクラテス』

病気は呪いや神々の仕業ではなく環境・食事・生活習慣などによるものであると主張し、医学を宗教から切り離した人物として知られています。

また、病気は4種類の体液の混合に変調が生じた時に起こるという四体液説を唱えました。

人間は血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁の四体液をもち、それらが調和していると健康であるが、どれかが過大・過小また遊離し孤立した場合、その身体部位が病苦を病むとした。

 

そのころ、東アジアにも古代中国という大きな文化圏がありました。

紀元前770年~紀元前221年(秦の始皇帝が中国を統一するまで)の約550年間を春秋戦国時代と言います。⇒wikipedia『春秋戦国時代』

孔子、老子、荘子、孟子などの思想家が活躍し、陰陽五行論(いんようごぎょうろん)も形作られていった時代です。⇒wikipedia『陰陽五行思想』

陰陽五行論では、木(もく)・火(か)・土(ど)・金(こん)・水(すい)の五行がバランスをとることで世界は成り立ち、ヒトの健康も同じ原理で考えます。

 

ユーラシア大陸の両端で、同じころ(ざっくりと紀元前500年~紀元前300年頃)に、西では四体液説、東では陰陽五行論が唱えられたのを、私は面白いと思っています。

 

シルクロードという言葉は19世紀から使われ始めましたが(⇒wikipedia『シルクロード』)、ユーラシア大陸を横断する交易路を通って医学や哲学の考え方も流通していたと考えるのは、私のロマンです。

wikipedia『シルクロード』より

 

 

ローマ帝国 vs 漢王朝 (BC200~AD200頃)

紀元前206年、中国初の統一王朝だった秦(しん)は滅亡します。

その後中国を統一した漢(かん)は、いったん滅亡しますが再興し、紀元後220年まで約400年間存在した王朝でした。⇒wikipedia『漢』

漢字、漢方、漢文など、私たちに馴染みの深い言葉として残っていますね。

その王朝の時代に書かれたのが、医学三大古典。『神農本草経』は薬草書、『傷寒雑病論』『黄帝内経』は医学書です。ここに、春秋戦国時代から育まれてきた陰陽五行論をもとにした医学がある程度の形となって残されました。

 

同じころ、ユーラシア大陸の西にあったのが、ローマ帝国

小さな都市国家だったローマは、紀元前272年にはイタリア半島を統一(⇒wikipedia『ローマ帝国』)。紀元前146年にはギリシャもローマの一部となり(⇒wikipedia『ギリシャの歴史』)、紀元後395年に分裂するまで巨大な帝国として存在しました。

wikipedia『ローマ帝国』より

 

このころ活躍したのがディオスコリデスガレノスです。

ディオスコリデス(40年頃~90年)は、ローマ帝国時代の医師、薬理学者、植物学者であり、『マテリア・メディカ(薬物誌)』と呼ばれる薬草の本をまとめた人物です。⇒wikipedia『ペダニウス・ディオスコリデス』

ガレノス(129年頃~200年頃)も、ローマ帝国時代に活躍した医学者です。

臨床医としての経験と多くの解剖によって体系的な医学を確立し、古代における医学の集大成をなした。彼の学説はその後ルネサンスまでの1500年以上にわたり、ヨーロッパの医学およびイスラームの医学において支配的なものとなった。⇒wikipedia『ガレノス』

 

紀元前約200年~紀元後約200年ころ、ユーラシア大陸の両端に存在した巨大な帝国の両方で、有名な本草書(薬草書)が記され、医学の集大成がなされました。

 

やはり、シルクロードを通って医学・哲学も一緒に交流していたように感じられて、ロマンを感じるのです。

 

歴史はロマン

私は高校生の時に世界史を選択していました。

日本史よりもスケールが広大で、また先生の話から世界史への愛が感じられて、とても楽しかったのです。

歴史を学ぶとき、たとえwikipediaを読むときでも、私たちの心は過去へと飛んでいきます。

 

紀元後200年ごろは、日本は弥生時代。卑弥呼(ひみこ)は推定紀元後242年~248年ごろの人物だそうです。

ユーラシア大陸で発展した医学は、古墳時代~飛鳥時代(紀元後300~500年代)に日本にもやってきます。

紀元前~紀元後200年ごろのユーラシア大陸の歴史も心の中に留めつつ、日本のハーブを学んでみると、シルクロードの喧騒が聞こえてくるような気がするのです。

 

 

※なお、西暦年は統一してwikipediaを参考にさせていただきました。

 

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プロフィール

飯田 みゆき
飯田 みゆき森と魂のセラピスト
薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事