原子力が巨神兵になる日
先週の金曜日、プロセスワークセンターが主催する合気道的身体から感じる原子力に参加しました。
スピーカーの木村先生は、東京大学工学部准教授として、原子力をめぐるコミュニケーションを研究されてきた方です。
現在は、原子力を中心としたエネルギー問題を話し合うための法人を作り、活動されています。
その時に印象に残った言葉が、
「一度発見されてしまった現象は、“なかったこと”にはできない。」
この言葉が自分の中で深く木霊(こだま)し、ひとつの可能性が浮かびあがってきました。
今日は、その可能性をSFファンタジー風に書きました。
あくまで、SFファンタジーです。
ナウシカ、ラピュタ、スターウォーズ、ガンダムなどの世界と同じように、生暖かい目でストーリーを読んでいただければと思います。
題して、「原子力が巨神兵になる日」
はじまり、はじまり~。
☆
その日、国連決議で全世界からの原子力の撤廃が採択された。
核兵器、原子力発電所は永遠に封印され、解体していくことになった。
遡ること数十年前、日本では国民投票で脱原発が決まった。
政府はこの結果を真摯に受け止め、太陽光、風力などのクリーンエネルギーの開発と普及に予算を配分した。
クリーンエネルギー業界には優秀な科学者が集まり、研究は進み、コストはどんどん低下し、政治家、投資家、商社など、
野望を持つ人々が集まってきた。ヒト、モノ、カネが集まり、クリーンエネルギー業界は発展した。ついに、日本は化石燃料の輸入を停止。
100%国産、100%クリーンなエネルギーで国民生活を送ることになった。
日本の技術は海外からも注目され、いつしか世界はクリーンエネルギーが経済の中心になっていった。
化石燃料は効率の悪いエネルギーとして、その割合を小さくした。
そして、ついにその日はやってきた。全会一致で、脱原発と共に核兵器の全面撤廃が国連で決議されたのだ。
それ以来、予算は原発と核兵器の解体のために使われるようになった。
原子力の研究と言えば、残ってしまった核廃棄物処理の研究であり、原子力技術は、人々の豊かな日常生活とは関係ない
科学技術になった。
夢を抱く優秀な科学者は、産業に結びつかない原子力の基礎研究に熱意を失った。
原子力の細かい原理を理解していない下請け業者がただ、解体する日々。
ヒト、モノ、カネが集まらない原子力業界は花形産業に参入できず、夢破れた科学者、業者などが、ただ、なんとなく
集まる場所となっていった。
そして数十年後、すべての原発と核兵器が解体された頃には、原子力技術の研究は、完全に空洞化していた。
☆
全世界でクリーンエネルギーが使われるようになって数百年後、人びとは原子力という技術があったことも忘れて、平和で豊かに生活をしていた。
☆
しかし、「一度発見された現象は、“なかったこと”にはできない。」
☆
山あいのうらぶれた研究室に、一人の若者がいた。
彼の仕事は、核廃棄物管理に関する研究。
そこは予算がほとんどなく、やる気のない科学者と流れ者の集まりだった。
原子力が封印されてから数百年、彼は、なぜ自分がこんな仕事をしているのか、わかっていなかった。
いつか、ここを抜け出して、成功者になってやるという野心を抱いていた。
ある日、彼は研究室の片隅で、その資料を見つけた。
そこには、彼が管理している核廃棄物を生み出した原子力の仕組み、
そして、原子力が巨大なエネルギーを作り出す仕組みが書かれていた。さらに、核爆弾の作り方と、実験方法。
数百年前には、この地球上でそんな実験が行われていたのだ。
彼は、核実験のデータに心が震えた。
『俺は、これで、世界を手にいれることができる。』
そして彼は封印を解いた。
日常社会に不満を持っている天才が集まり、核爆弾を作った。
☆
世界は再び、核の恐怖に支配された。
最先端の科学者も、原子力について全く学んでいなかったため、彼らの核の前になすすべがなかった。
核の恐怖に震える日々に、人々が立ち上がった。
『原子力は封印すべきだ。』
民意が結集し、原子力は再び封印された。
☆
しかし、「一度発見された現象は、“なかったこと”にはできない。」
☆
数百年後、再び封印を解くものが現れ、そして民意で封印し、再び誰かが封印を解く。
同じことが、メビウスの輪のようにこの地球で繰り返され、原子力は悪魔に魂を売った者だけが手にする“技(わざ)”として、永遠に存在し続けるのである。
ナウシカ世界の巨神兵のように。
一度発見された現象は、“なかったこと”にはできない
のだから。
(おわり)
自分でも絶望感に打ちのめされるストーリーですが、自分のメモとして書き残しておきます。
あくまでも、SFファンタジーとして、留めおいてください
それでも、私は、自然界の力とヒトの力を信じたいと思っています。
プロフィール
- 薬剤師/公認心理師/産業カウンセラー/プロセスワークプラクティショナー/森林インストラクター/森林セルフケアコーディネーター/メディカルハーブプラクティショナー/ドルフィンスターテンプル認定ヒーラー/日本森林療法協会元理事
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